Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「ジェイミー、おはよう」
いそいで、ぱっと両手を肩の高さにまであげ、片頬をひきつらせながら
グレイがあいさつをかえし、それを確かめたジェイミーの頬が、
わずか〜に笑みのかたちになる。
そしてもう一度ミュアにむきなおると、彼は、甘えた声をだした。
「ねぇ、母上、僕ちゃんと、きのう一日おとなしくしてたから、
今日は水遊びをしてもいいでしょう?」
「そうね、もう咳もでなかったし、少しだけならいいわ」
「やったぁ!」
ばんざいと両手をあげ、くるりとグレイの方をむくとジェイミーは
「ちゃんとお許しをもらいましたよ、父上!」
と、勢いよくグレイの首にかじりついた。
まるでぽんぽんとあっちこっちへと跳ねるボールのような
ジェイミーの身体を抱きしめて、グレイが苦笑する。
「よし、約束通り今日は仕事はしない。一緒に水遊びをする」
「やったぁ!!」
満面の笑みでもう一度叫び、ジェイミーは勢いよくベッドからとびおりた。
「ムタフ、行くよ。すぐに朝ごはんだ」
かけだしたジェイミーの後をムタフが追う。
だが、部屋の入り口まで駆けた彼はふりかえると、ひどく真面目な顔で、
学校の先生のような声をだした。
「父上、いつまでも母上を離さないでいては困ります。
それに、いいかげんにベッドから出てください、
もう、朝なんですから」