Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
木漏れ日がちらちらする木の根元で、ミュアは深く息を吐くと、
目を閉じ、木の幹に背中をあずける。
あの時、グレイにけっして妊娠しないと言ったのは、嘘だった。
ウォーレスに命じられデリアはたしかにミュアにお茶を飲ませたが、
それは不妊の薬ではなく、薬が身体に及ぼす影響をかんがえ、
滋養強壮のためのお茶をだしていたのだと、デリアはあの夜
ミュアに言った。
だから、妊娠する可能性は多いにあった、自分の身体のサイクルの日にちを、
数えても。
ミュアは賭けたのだ。
愛する人の子供を身籠りたい。
グレイとのことを無かったことには、してしまいたくない。
身籠ったとわかり、元気に生まれたジェイミーがグレイと同じ髪と瞳をもつ
とわかったとき胸に喜びが満ち、ミュアは神に感謝した。
失くしたものの大きさを神が憂い与えてくださったのだ、そう思って
生きてきたからミュアは、少しだけ今の幸せが怖い。
ーー こんなに幸せでいいのかしら ー。
グレイがいるということ。
一緒に暮らすことなど、想像すらできなかったのに、ー ー なのに、今は。
ふと、ミュアは冷たいしずくを膝の上に感じて、目をあけた。