Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
髪から水滴をおとし、グレイが乱暴に髪を布でふきながら
敷物のうえに寝転がり、ミュアの膝のうえに頭をのせてくる。
「ああ、疲れた、まったくジェイミーは元気がよすぎる」
「水遊びができなくて、ずっと我慢してたから。
でも、はしゃぎすぎるとまた、咳がではじめるかも……
呼んでくるわ」
そう言って立ちあがりかけたミュアの腕を、グレイがひっぱった。
「だいじょうぶだよ」
「でも、」
「喉がかわいたから、飲み物をもらってくるって屋敷に
もどっていったから、子守のメルディがみてくれる」
座りなおしたミュアの膝のうえで、ごろんと仰向けになると
グレイはうーんと伸びをして目を閉じた。
「風が気持ちいいな」
「ええ、そうね」
気温も湿度も高いこの国は、北のターラント生まれのミュアには大変だが、
暑いからこそ風が通りぬける日陰の心地よさを、味わうことができる。
風に乗って南国の花の濃い香りが届き、木々の間で鳴きかわす、
長い飾り羽をもつ極楽鳥の声が聞こえ、ミュアはあらためて自分が
今いる場所の不思議さを思った。