Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
ターラント、あるいはアルメリオンの石造りの王城が、
自分の世界で、それは老いて死ぬまでかわらないと思っていた。
急にミュアは、腿のうえにのせられたグレイの頭の重さや体温を意識した。
ここ南国の衣装は、コルセットやクリノリンでしぼったり
膨らませたりしたうえに、ごてごてと飾りつけられたドレスで育った
ミュアには、なんとも心もとない。
伝統的な文様を染めぬいた布でつくられた、ケパラとよばれる衣装は
胸ぐりが大きくひらいた短めの丈のブラウスと、サロンとよぶ巻きスカートを
組みあわせたもの。
布地はしっかりと織られているが、薄く、グレイだってミュアの腿の
温かみが感じとれているはずだ。
そのうえ、サロンには膝から下にスリット(切りこみ)がはいっているから、
グレイの頭のちかくには、ミュアの素肌がすこしだけのぞいている。
淑女は素足を晒さない…… ターラントでもアルメリオンでも
そうだったのに……。
ミュアはさりげなく手を伸ばし、わずかに見えている肌を隠そうとした。
でも、変に意識しているとは思われたくなくて、ミュアはわざと大きな声で、
グレイに声をかけた。
「ムタフはどこへ行ったのかしら?」
「ジェイミーについていったよ」
「すっかり仲良しね、ジェイミーはグレイシュと別れるのを
悲しんでいたから、ここにムタフがいてくれてよかったわ」