Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 オーガは美しい獣だ。
 見かけはヒョウににているが、首下と足先の毛が長く、額に一本の角をもつ。

 
 オーガを育て身近に置くことは、貴族のステイタスの一つだが、簡単なこと
 ではない。
 だからこそ、自分の育てた自慢のオーガの優劣を競いたいと、大陸の五つの
 国のうちの、ターラント、アルメリオン、バハムの三国による競技会が、
 四年に一度ひらかれる。


 その競技会に、ミュアはシルヴィとともにやってきた、ターラント国王女
 だということは隠して。


 なぜなら、王族はあまりオーガを飼わない。
 これはあくまでも貴族の遊びだからだ。

 ミュアの正式名称は、ミュアリス=パレス=ターラント だが、この競技会
 では、ミュア=バーンとチェイコックの姓を名乗っている。
 チェイコックは、本当はまだ十二歳になったばかりのミュアのお目付け役
 だけど、ここではミュアの叔父(仮)。



 まだ子供のミュアは成獣のオーガは扱えないから、幼獣を扱う
 ジュニア部門に出場する。
 そして今、午後からのジュニア大会を前に、広い芝生広場の定められた
 場所では、ミュアと同じ年頃の少年たちが、それぞれ自分のオーガとの練習に
 はげんでいる。
 そう、芝生広場には十五人ほどの少年たちがいて女の子はミュア、一人。
 このこともチェイコックが “ 棄権しろ “ という理由の一つだった。


 決して女性 =(レディ) がオーガを飼ってはいけないというわけではないし、
 競技会に女性が出場したことがないわけでもない。
 だがそれはとても珍しいこと。
 レディの嗜みからは少々外れるといってもいい。
 だが、ミュアはそんなこと少しも気にしていなかった。



 二年前、はじめてシルヴィに出会ったミュアは、彼女に夢中になった。



   「シルヴィ、あなたはここにいるどのオーガよりも、すばらしいわ」


 
 やさしく撫でられシルヴィはミュアにだかれたまま、ごろごろと喉を鳴らした
 だが、


   
   「さあ、始めましょう!」


 
 ミュアの元気のよい声に、今まで甘えていたのが嘘のように、すばやい動きで
 芝生に飛びおりると走り出した。

 その後をミュアが追う。
 そんな一人と一匹を見送って、チェイコックはやれやれとため息をついた。



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