Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
三日後 帰国予定だったノイエ卿の馬車が、車輪の音を響かせて
ターラントの王城についたのは、次の日、まだ朝食がすんで間もない頃。
「ノイエ卿が? 今朝、戻ったというの?」
「はい。予定では、三日後ということでしたが」
そんな急に? 何かあったのだろうか?
ミュアは首をかしげる。
もしかして……、ついに婚姻の式の日取りが決まったとか!?
視察に行っていたノイエ卿が、式の日取りが決まったからと、
予定を繰り上げ、しかもこんな朝はやくからやってくるはずがない、
と思うものの、もしそうだったら……と思うと、ミュアの胸は高鳴る。
座っていられなくて、すくっと立ち上がり、ドア近くまで歩いていくけれど、
ノイエ卿はまず視察の報告を先にするだろうと、すごすごとソファまで戻る。
しかし、やっぱりじっとしていられなくて、立ち上がりドアの方へ歩み
かけるが、呼ばれてもいないのに出ていくことは、レディにふさわしくない
気がして、くるりと振りかえりデスクの椅子に戻る。
意味もなく羽ペンで、自分の名前を十五回ほども書き、紙いっぱいになった
ところで、また立ちあがってみたけれど、どうしていいかわからず、ミュアは
また、すとんと椅子に座った。
そんなミュアの様子をクロエと、クロエの足元にいるシルヴィが
落ち着きはらって見ている。
そして、もう何度目になるかわからないくらいになったが、再びミュアが、
すっと立ち上がったところで、部屋にノックの音が響いた。