Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 式は終わり、余計なものを剥ぎとって大聖堂の建物の外にでた
 グレイは、外回廊の下の岩壁に身を預けると、ゆっくりと息を吐いた。


 ” 誰も来るな! “ と言いおいて引っ込んだ控えの間がからっぽなことに、
 そのうち誰か気づくだろうが、今は独りでいたかった。


 王冠の重さと、侮蔑や嫌悪のまじった視線から少しだけ離れていたい。
 平然とした顔で式はすませたが、心が軋んだ音をたて、グレイは疲れていた。


 独りになって、身体の力をぬく、心をからっぽにする。
 すっと動いた指先が、いつものように襟元にとめたルビーを触っていた。
  平気だ、こんなことには慣れているー ー
 ごつごつとした岩壁に身を預け、頬に風を感じていれば、
 ささくれ立った気持ちが静まっていく。

 
 すると、ひそめた声が頭上から聞こえ、続いて、ぱらぱらと小石が落ちてきた。

 
 グレイは目をあげて上を見たが、茂る蔦に遮られ、なにも見えない。
 身体を動かし、蔦の葉をさけるように首を伸ばそうとしたグレイはぎょっ、
 となって身を引いた。
 
 華奢なヒールのついた靴が見えたと思ったら、それに続く、
 絹の靴下につつまれたふくらはぎがにゅぅと現れたからだ。


   
    「大丈夫ですか?」
    「ええ、ちょっとドレスの裾が引っかかっただけ、もう少しで
     降りられるわ」



 そんな声とともに、華奢な手がドレスの裾を引き下げ足は隠れ、
 続いてロイヤル・ブルーのドレスの細い腰と、魅惑的な曲線を描く胸が見え、
 流れるような細いブロンドの髪を揺らして、若い女が地面に降りたった。

 
 頭にのせた夫人帽についたレースで、顔ははっきりとはわからない。
  
  石壁を伝って降りてきたのか?
  たいした高さはないが、淑女のすることではないだろう。
 そう思って見つめるグレイに、女はまだ気づかず、壁に手をつき満足そうに
 息を吐いたが、上にいるらしいもう一人の女に声をかけようとして、
 はっとグレイの方を向いた。

  
  レースが邪魔だな ー ー
 だが、薄っすらとわかる顔の輪郭はきれいで、頬から首すじにかけての肌は
 白く滑らかだ。
  プロポーションもいい……。
 なにより、プラチナブロンドの髪が美しい。
  
  
   プラチナ・ブロンド……。








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