Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
好奇心に駆られレースのむこうの顔が確かめたくて、
グレイは一歩ふみだしたが、上から、とんと降りたった小柄な女が、
行く手を遮るように立ちはだかった。
やはり帽子のレースで、この女の顔もわからない。
降りたった黒髪の女は、落ち着きはらった態度でグレイにむかって
お辞儀をすると、言った。
「下に人がおられるとは思わず、無礼をいたしました。
ですが、先を急ぎますので失礼いたします」
凛とした声で、少し早口、言葉を差し挟む間を与えず言いきり、
振り返ろうとする。
「待て、今日ここでなにが行われていたか知らないわけではないだろう
それなのに不審な女が二人、こんなところから聖堂の外にでよう
としている。
見過ごせることだと思うか」
グレイの言葉に彼女は、背を向けかけていた身体をぴたり、と止めた。
「どうだ?」
グレイの声には、自然と相手を従わせる響きがある。
意図的に作り出した、威圧感にその場が支配される。
「……」
その時、
「待ってください」
そう声がして、ロイヤル・ブルーのドレスの女がグレイの前に進みでた。
「確かにおっしゃるとおりです。でも、私たちは
新王に害をなす者ではありません」