Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
部屋を出て行ったグランデール夫人と入れ違いに、クロエが
お茶の道具をもって入ってきた。
そして、爽やかなレモンの紅茶のカップをミュアに手渡す。
「屋敷を抜けだしたこと、誰にも気づかれていないようです」
「よかった」
「でも、あの、貴公子に見つかったのは……」
「ええ、まずかったわね」
ふう、と息をはき、紅茶をひとくち含んだところで
「グレイ陛下でしたよね、あの貴公子は」
とクロエが言ったので、ミュアは盛大にむせた。
「ぶっ、ごっ、ごほ、ごほっ」
紅い髪にゴールドに近いアンバーの瞳、たしかに面影のある姿だったけど
戴冠式を終えたばかりの国王が、あんなところにいるだろうか。
「国王が、あんなところに一人でいる?」
「たしかに変ですけど、黒ずくめの衣装も同じようでしたし」
そうだけど、レースを剥ぎ取られ、顔を見られた相手が国王だとは、認めたくない。
「よく似た他人かも……」
「ミュアリス様、真実から目をそむけるのはよくありませんよ」
クロエが、お小言をいうときのチェイコックと同じ顔をした。
「認めたくないのはわかりますが」