Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 自分のために割り当てられた芝生の一区画にやってくると、ミュアは
 置かれていた五枚の薄い皿のようなプレートを手にとり、
 かたわらにちょこんと座るシルヴィにやさしく声をかけた。
   


   「いい? シルヴィ、 このプレートをとってくるのよ」
   「ミャウ」


 わかったというようにシルヴィが一鳴きし、ミュアは勢いをつけて、
 プレートを空に投げた。
 飛んでいくプレートをめざして、シルヴィが走りだす。
 そしてプレートに追いつくと、高くジャンプして、ぱくりとプレートを
 咥えた。


   
   「シルヴィ、 戻って!!」



 ミュアが叫ぶと、プレートを咥え、全速力でもどってくる。



 プレートの距離、ジャンプの高さ、キャッチするときの姿勢、
 そして戻ってくる速さ、これらを競うこの種目は、”フライングキャッチ”
 と呼ばれ、難易度の高いものだ。
 だが、シルヴィはそれを楽々とこなす。


   
   「すごいわ、シルヴィ とてもいいわよ」



 続けて四枚のプレートを投げ、一度もミスすることなくプレートを
 持ち帰ったシルヴィの首下を充分に撫でて、ミュアはシルヴィに微笑みかけた。


 そんなシルヴィとミュアの姿はほほえましくもあり、また、周りの視線を
 充分にひきつけるほど美しかった。
 シルヴィがめずらしい銀色の毛をもつオーガなこともあるが、ミュアもまた
 魅力的な少女だったから。


 ハーフアップにしたプラチナブロンドの髪が背中に流れ、美しい
 アイス・グリーンの瞳は、今は細められている。
 白くふっくらとした頬をもちあげた桜色の唇は、やさしい笑みを
 形作っている。
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