Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
預けられている公爵邸をぬけだして、無断で戴冠式に紛れこんだ
だけでも大問題なのに、あろうことか、石壁を伝い降りるという
無謀な振る舞いを見られ、
それに…… あの時…… ドレスの裾が、捲れあがって……。
思い出さなければよかったことまで思い出して、ミュアは目を泳がせた。
「ごっ ほっ 」
お茶も飲んでいないのにまたむせたようになって、ミュアは、
ごほごほと咳をする。
そんなミュアの背中をさすりながら、クロエがぽつりと言った。
「でも、助けてくださいましたね」
そうだ、ミュアの顔を見たのに、彼は、何も言わなかった。
私の顔がわからなかったのかしら ー ー 。
それはそれで、なんとなく癪にさわる。
一週間後には、結婚する相手なのに。
背中をさすられながら、ミュアは、今度は、大きなため息をひとつはいた。