Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

   
    「何か?」
    「い、いえ……」



 ぐっと距離をつめられて、ミュアは一歩、後ずさる。


   
    「なんだか、顔が赤いけど?」



 そう言いながらグレイが近づいてくるので、ミュアは、
 また一歩、一歩と後ずさった。


   
    「期待しているとか?」
    「は?」



 とん、と膝裏があたり、ぽすっ、とミュアはベッドに仰向けに倒れた。
  
  期待? なにを?

 言葉の意味はわからないが、ミュアを見下ろすグレイが……、 
 そしてなによりこの状況が、とっても危険に思えて、ミュアは、また、
 ずりずりとベッドの上をさらに後ずさる。

 しかし、ギシリとベッドに膝をつき、四つん這いになったグレイが、
 ミュアをさらに追い詰めた。


 そのグレイの姿にしなやかな獣の姿が重なって、ミュアは小さく息をのむ。
 
 
 オーガ……。
 赤い毛並みに、ゴールドの瞳の、美しい野獣 。



 食べられてしまう……。

 命の危険を感じて怯える気持ちと同じなようで、少し違う、ゾクゾクとした
 甘やかな痺れと、怖れを感じて、ミュアは目を閉じた。



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