Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 まだ微笑みを残したまま、ミュアは立ち上がり、プレートを
 かまえた。
 次もきっとうまくいく ……
 期待で胸をふくらませながら、ミュアはプレートを力一杯、投げた。
 ちょっと力を入れすぎたのかもしれない。

 プレートは今までとは違う方向に飛んでいったが、シルヴィは
 すばやく身をひるがえし、やすやすとプレートに追いつく。
 そしてシルヴィが飛ぼうと身を低くしたとき、別の方向から飛んできた
 プレートが、ミュアの放ったプレートに近づくのと、そのプレートを
 追って黒いオーガが走ってくるのが見えた。

 そしてシルヴィが高く飛んだとき、黒いオーガも飛び、二匹は空中で
 激しく衝突した。


    「ギャッ」
    「ギャゥ」


 
 苦痛の叫び声をあげて、二匹が空から落ちてくる。


    
    「シルヴィ!!」



 ありえない出来事に、口に手を当ててミュアは一瞬棒立ちになったが、
 すぐに落下して倒れているシルヴィのもとへ走り寄った。


   
   「あぁ、なんてこと……」



 抱き上げたシルヴィはぐったりとしている。
 そして、その額を見たミュアは雷に打たれたかのように全身を
 こわばらせた。


   
   「角が、」



 額の角は半分ほどの長さを残して、ポッキリと折れていた。
 異変に気づいて人が集まりはじめる。

 ガヤガヤした声の中に、” 獣医を呼べ “ という声があり、シルヴィを
 抱きしめていたミュアは少し、安堵の息を漏らした。

 目を開かないけれど、抱きしめたシルヴィの身体からは力強い脈拍が
 伝わってくる。
 命に別条はない。
 駆けつけた獣医がなんとかしてくれるだろう。
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