Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
一ヶ月半前、夫となった人の姿が頭にうかぶ。
姿かたちは思い浮かぶけど、よくわからない人というのが、
ミュアのグレイに対する感想だ。
何を考えているかわからない、
執務以外になにをして一日を過ごしているかわからない。
彼は、自分からはあまりしゃべらない。
聞けば答えてくれるが、すべてがあらかじめ用意された
模範解答のようで、伝わってくるものがない。
それに、ミュア以外にだれかが一緒にいるとき、
グレイの態度はその時々でころころかわる。
快活に振る舞うかと思えば、ひどくやさしく思慮深くなったり、
ひんしゅくを買うような馬鹿らしい言動をしてみたり、
ときには、ミュアなど存在しないかのように、まったく無視をする。
まるでその場のだれかのために、決められた役を演じているようだ、
とミュアは思う。
二人きりになる時間は少なくて、毎夜、同じ部屋で休むときが
そうだけど……。
彼は、決してミュアに触れない。
最初の日、ミュアを追い詰めた彼は、
「なにもしない、安心して寝ろ」
そう言ってミュアの身体に上掛けをかけると、ぽんぽんと子供を
あやすように上掛けをたたいてベッドをおりた。
そして、ずーっと、毎夜、長椅子で寝ている。