Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
グレイが視線をむけると、教授は眉間の縦じわに不安の色を
にじませていたが、ミュアリス王妃は落ち着きはらった顔をしていて、
ちらりとグレイを見た。
そして、ダメだと言おうとしたグレイより、わずかに早く、
大きく一歩前にでると、グレイとその場の者に向かって、丁寧な
貴婦人の礼をする。
「大切な国政の場に押しいるような真似をどうぞお許しください。
まだまだ私のような者が入ることが許されない場
だということは、承知しております。
ですが、アルメリオン独特の文法がどのように使われているか、
目で見、肌で感じることが必要だと思ったのです」
そう言って、ミュアはにっこりと議長に向かって微笑んだ。
「いかがでしょう、議長閣下。見学を許していただけますか?」
「あっ……う……」
威厳を保つために銀の巻き髪のかつらをつけた議長は、狼狽え、
グレイの方を向く。
「だめだ」
即座にグレイはそう言ったのに、
「まぁ、よいではありませんか」
と、間延びした声が、ざわめく議場にながれた。