Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
しばらくして顔をあげたミュアは、自分の周りを取り囲む人の足の向こうに、
同じようにオーガを抱きしめている少年を見つけた。
彼のオーガがぶつかったんだわ ーー
そう思うと同時に、例えようもなく鋭く激しい怒りが、身体の奥から
わきあがり、頭のてっぺんに達した。
唇を強く引き結び、シルヴィを抱いたまま立ち上がったミュアは、
黒いオーガを抱いて跪いている少年の前までいくと、すぅっと大きく
息を吸った。
「どういうこと? ここは私に割りあてられた場所なのに、なぜ、
あなたのオーガが飛びこんでくるの?」
ミュアの、触れれば切れるのではないかと思うほどケンを含んだ声に、
少年が顔をあげる。
整った顔立ちの少年だった。
紅い燃えるような髪、そして相手を射るような鋭い視線。
めずらしい紅い髪も印象的だが、何よりミュアの目を引いたのは、瞳の色だ。
アンバーだが、ゴールドのように見える、まるでオーガの瞳のような……。
「何だって?」
少年は、ミュアの言葉がわからなかったというように聞き返したが、
その声には怒りが含まれていた。
そのことを感じとって、ミュアの中でも怒りの炎が勢いを増す。
詫びる言葉がでてくると思ったのに、相手は詫びる気持ちがないどころか、
怒っている。
「聞こえなかったの? なぜ、私の場所に飛び込んだのかと
聞いたのよ」
「聞こえたさ、でも、君の言う意味がわからない」
「はっ?」
あなたの言うことの方が訳がわからないわ!ー ー
ミュアはイライラし、苛立ちをぶつけるように勢いよく口をひらいた。
「あなたのオーガが飛び込んできたせいで、シルヴィは大切な角を
失ったの
角が折れてしまったのよ!!」