Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
(5) 投げつけられた嫉妬
ぼんやりとした表情のまま、ミュアはデリアが淹れたお茶を飲む。
温かい紅茶が身体のすみずみまでいきわたれば、頭痛は軽くなるもの
なのに、かえって増したように感じるのはなぜだろう。
こんなときクロエが側にいてくれたら、ボドナ鉱山のことも、
デリアのことも、夫であるグレイのことも相談できるのに。
グレイとの出会いは最低だった。
今だって良いとは言えないけれど、昨晩のグレイの態度を自分ひとりで
考えていると、縺(もつ)れた感情が、ますます縺れていくように感じる。
アルメリオンからミュアについてきてくれたクロエは式が終わると、
アルメリオン流の侍女の心得を知るためにと、
デリアにゆかりのある家に預けられてしまった。
デリアは、ミュアがクロエを頼りのしているのが気に入らなかったのだろう。
きっとクロエは、デリア並みにいかめしい顔をした人たちに囲まれて、
苦労しているにちがいない。
そう思うと、弱気になって頭をかかえ泣き言を言っていてはだめだ、
という気持ちになった。
鉱山の話をグレイとするのはもう無理だ、と思う。
” 軽々しくターラントのことを口にするな ” と言ったグレイ。
……やり方は最低だったけど、私を止めてくれたんだわ 。
もしあのまま議会で、ミュアがターラントの権利を主張し続けていたら、
きっと貴族の反感をかうだけになっていただろう。
だからといって、このまま見過ごすことも出来かねる。
だからミュアは、その日の午後、侍女を一人ともなって、南棟にある
トラビス=リード補佐官の執務室を訪ねた。