Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
もちろんトラビスは驚いた顔をしたが、女性といっても通るような
やさしげな顔に、柔和な笑みをうかべ、ミュアの話に頷いた。
「わかりました。ターラントの不利益にならないよう考えるべきだ
という意見が議員たちの間からでるように、うまく取り計らいます」
「あの、このことは、陛下には……」
心得たようにトラビスが再び頷く。
トラビスはグレイの補佐官なのだから、本当ならばミュアを
いさめなければならないのに簡単に話が通り、ほっとするとともに
ミュアは、不快感をおぼえた。
ここでも、グレイは軽んじられているのかしら? 国王なのに。
話は終わったはずなのに席を立とうとせず、なぜかにらむように
自分を見ているミュアにトラビスは、ちょっと首をかしげると、
あぁ、と何かを思いついたような声をだした。
「クロエ嬢でしたら、大変よくやっていらっしゃいますよ」
「え?」
「わが家の家令がほめていました。
リード家の奥方とあれだけ互角に渡りあえる貴婦人は、
めったにいないと」
「クロエはトラビス殿のところにいるのですか」
「私は王城住まいですから、正確には私の実家のリード家にいるの
ですがね」
「でもデリアは、自分にゆかりのある家だと」
「そうですよ、デリアは母の姉なんです」
「……」