Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「そうだね、こことここは入れかえた方がいいかな、
彼は男爵だけど、主賓の一人のモルガン将軍の縁者なんだ。
それからここも。
あとはフォッテン侯爵がこんな末席では……」
「でも、侯爵はまだお若いかたなんでしょう?」
「そうだけど、一年前、侯爵夫妻が相次いで亡くなって、今は彼が当主
なんだ。
古い家柄でもあるし」
「わかりました、ではベリネイ夫人のとなりに」
「そこだと一席しかない、二席準備できるところに。彼の妹も出席
だから」
きらりとクノエの目が光ったような気が、トラビスはした。
「妹と言われますが、それこそまだ、社交界デビューもすませていない
” ひよっこ ” なのでは?」
ひよっこ……?
トラビスはクノエの言葉に、今度はするどい針のきらめきを感じ、
わずかにたじろいだ。
「あー、ご両親を亡くされて遅れたのは確かだけど、先々月、
デビューをすませた十七歳の可愛らしいご令嬢だよ」
さらに目の前から、ごぉーと、冷たい風が吹きつけたように感じ、
トラビスは目を瞬いたが、目の前には、クノエ嬢が可愛らしくにっこりと
笑っているだけだ。
「わかりました、最前列、でも、ここ!しか二席はできません。
ご了承いただけますね」
「あ…? ああ、よろしくお願い、いたします」
気づかぬうちに、ずいぶんとへり下った言葉できちんと頭をさげたトラビスが
頭をあげたときには、もう、部屋の戸がぱたんとしまるところだった。