Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
(6)-1 幸せの外側
青空のもと、祝賀会は西門横の広場でひらかれることになった。
天幕がいくつも張られ、国王や王妃、主賓がすわる長テーブルの前に、
金の縫いとりのあるクロスをひろげた丸テーブルと椅子がおかれていく。
秋の初めの夜半の嵐が雲を引きつれて去っていったせいか、空は青く
澄みわたり、ときおり強い風が、テーブルクロスを巻きあげていく。
惜しみなくすべてのものに、太陽が祝福の光をなげかけている、
そんな日だった。
身支度のため侍女に髪をすかれながら、ミュアは
” 今日着るつもりの濃紺のドレスは屋外のパーティでは、
重々しすぎるだろうか ”
と、考えていた。
それでも婚姻を機にしつらえたドレスの中では格式のあるものだし、
王妃という立場上あまり派手なものはひかえたい。
でも 、こんなに清々しい天気で、しかも屋外だもの。
ぱぁっと華やかな衣装にも身を包みたい。
ターラントの王女であったころが懐かしかった。
……王妃って、不便なものね ……。
「ミュア様、今日は髪はすこしだけあげて、あとは下ろして
おきましょう。
ミュアリス様の細い髪では結い上げても、強い風ですぐ崩れて
しまうでしょうから」
近づいてきたクロエがそう言い、髪を整えると、着替えを始めましょうと
ミュアをうながす。
そして、クロエがひろげたのは、濃紺のドレスではなかった。
「国王陛下から、ミュアリス様への贈り物ですよ」
上質な布地に、胸もと、袖口、そして裾から腰にむかって細かな刺繍が
ほどこされたドレスだった。
わずかな緑をふくんだ オイスター・ホワイト の布地の色は地味だが、
かえって刺繍の金糸がひきたち、ドレスの美しさを際立たせている。
派手すぎず、かといって上品な華やかさのあるドレス。
綺麗なカッティングのラインの胸もとを飾るのは、エメラルドと金の首飾り。
同じ意匠の飾りを髪にも耳にもつける。
「すてきですわ、ミュアリス様」
ミュアの美しさを、存分に引き立てるドレスとネックレスなどの飾り……。
これを、グレイが私に?
ー ー うれしさが、ゆっくりと、ミュアの胸を満たした ー ー。