あの花のように…
第2章 誕生日
入学式からしばらく経った5月6日。授業にもだいぶ慣れて、毎日楽しくやれるようになりました。
「いただきます。」
今日の朝ごはんは焼き魚とお豆腐のお味噌汁とご飯。焼き魚は今日は焦げてないからおいしい。
「どう?今日は上手く出来ただろ?」
お父さんがソワソワしながら聞く
「…まぁ、おいしい」
「そうか。良かった。そうだ!今日はお父さん夕方には帰れるから、自分で夕飯作らないで良いからな。多分お父さんの方が少し遅いけど。」
「…分かった。ごちそうさま。行ってきます。」
はぁ。今日は早いのか…寄り道出来ないじゃん。
「いってらっしゃい。」
今日は早く帰りたくないな…昨日だってまともに話できなくて、余計に悲しくなったし。
「おーい、麻り…ってどうしたの?暗い顔して…。」
「紗菜…。あのね昨日さ…」
「そっか…お母さんの仏壇の写真がきになっちゃったんだ…まあ夢の件も解決してないしね、しょうがないよ…。そうだはい!これ。」
紗菜が綺麗にラッピングされた包みを出す。
「なに?これ。」
「昨日作ったんだ。今日は麻鈴の誕生日でしょ?」
「あっ、そうか。だからお父さんも…。」
「きっとお祝いの準備してようとしてるのかもよ?だから、今日はお父さんと暗い話じゃなくて明るい話でもしてあげなよ。」
紗菜が私に言い聞かせるように言った。
「でも…私はまだお父さんの事許せてないから…お願い紗菜。夕飯までには家に帰るから、今日だけは私に付き合って?遅く帰る口実がいるの。」
私は紗菜に懇願する。
「でもおじさんは麻鈴が早く帰るのを楽しみにしてるはずだよ?そのおじさんの気持ちはどうするの?」
「それは…。」
「今日だけは早く帰りな。大丈夫!話は明日ちゃんと聞いてあげるから。ね?」
「…分かった。」
「よし!じゃあ学校行こ!」
そう言うと紗菜は私の手を取り走り出した。
「あっ!お前らおせーぞ!」
弘樹が待ちくたびれた様子で言った。
「そういうアンタは早いね。」
「あったりめーだ。俺は根は真面目なんだから。」
弘樹が得意げに言う。
「それ、自分で言う?」
「あはは!」
二人のやりとりに私は自然と笑顔になった。
「あ!麻鈴、これ。お前にやるよ。」
そう言って弘樹が差し出したのは私が昔好きで飲んでいた紙パックのいちごオレだった。
「えっ?くれるの?ありがとう。」
「お前今日誕生日だろ?だからやる。」
「覚えててくれたんだ。」
ちょっと嬉しいな。しばらく会えてなかったし。これも今はそんなに飲まないけど嫌いなものじゃないし。それに比べてお父さんは…
「しかしアンタはよく覚えてたねー?てっきり忘れてるかと思ってたのに。」
「忘れてねーし。幼馴染みの誕生日くらい覚えてられるから。」
「ふふ。ありがとう。」
「ああ。そういやー今日の授業なんだっけ?」
「あー。アンタはそっちは覚えてないのね。今日は現代文と、数学、日本史2時間に体育2時間でしょ?」
「えー。数学あんのかよ。めんど。」
弘樹が頭を抱えて一気に肩を落とした。
「まぁ体育館あるんだからいいじゃん。」
私が慰めるように言った。
「まぁな。」
しばらくしてHRが始まり予鈴鳴って授業が始まった。
私は現代文の今の単元はあまり好きじゃない。早くにお母さんを亡くした女の子のことを書いた小説だから。
はぁ…今日はお父さんと一緒にいる時間が長いな。どうしようかな。
「…りん。麻鈴!」
「へっ?」
「へっ?じゃないの!もう昼休みだよ!」
紗菜が時計を指さす。
「うそ!本当に!?」
「アンタ授業中ずっとポーッとしてるんだもん。1回も当てられなかったのが奇跡だよ。」
「そ、そうだっけ?」
そ、そんなに長い時間考え事しちゃってたんだ。
「麻鈴。大丈夫かよ、体調でも悪いのか?」
弘樹が心配そうな顔になる。
「ううん!そんな事無いよ。ただ考え事してただけだよ!」
「全くだから学校ではあまり考え事しちゃダメなんだってば。」
紗菜が少し怒ったように言った。
「ごめんごめん。はぁーびっくりした。」
「それはこっちのセリフ!」
それからというもの体育の授業はサッカーだということもあり考え事をする日まもなく、ただ無我夢中でボールを追いかけ回りました。
「うう…サッカーはにがてなのにー。」
やがて帰りのHRも終わり…
「はぁー!今日も疲れたな!」
「アンタまたコンビニ寄らないよね?」
「あっ?ああ…昨日母さんに心配されてよ、今日から作り置きしてくれてあるから家に帰るよ。」
「そっかなら良かった。アンタコンビニ弁当ばかり食べてたら絶対栄養失調になってるところだからさ。」
「へいへいご心配どーも。太ってるお前に言われたかねぇけど。」
「なーに?なんか言った?」
「い、いや。別に…。」
「ふふっ。本当に2人は仲良しだよね!面白いし。」
「な、仲良くないよ!」
「全くだ!誰がこいつとなんか仲良くするかよ!じゃあなお前ら。」
「あ!逃げた!アンタ明日ただじゃおかないから!」
「紗菜。明日は土曜日だよ…。」
「そ、そうだった。」
「あはは!面白過ぎ。」
「もう。笑わないでよー。恥ずかしいじゃん笑」
「ごめんごめん。じゃあ月曜日ね!紗菜。」
「いつでも連絡して来ていいからね?」
「ありがとう。じゃあ」
「じゃあね!」
はぁー。帰って来ちゃった。
「ただいまー。」
「おかえり!今ご飯作ってるからカバン置いて着替えておいで。」
「…分かった。」
はぁ嫌だな…絶対気まづいって。
「えーっとパジャマは…。」
「まーちゃん!準備出来たよー」
「はーい…。」
「じゃーん!見てみて!今日は腕に寄りを掛けてまーちゃんの好きなものばかり作ってみましたー!」
嬉しそうに言うお父さんの視線先にはテーブルに並べられた、唐揚げとサラダ、デザートに食べるであろうショートケーキがあった。
「今日はまーちゃんの16歳の誕生日だから結構頑張ったんだ。さぁほら!座って?」
「…分かったよ。」
「今電気消すから火を吹き消して?」
「…うん。」
「さぁどうぞ!歌は照れるから省略ね?」
「ふーっ。」
少し面白いかも。
「おめでとう!はい。プレゼント。」
何かな?毎年同じものだったけど流石に今年はね…。
「え…。」
正直ショックでした。プレゼントは押し花で作った、栞だったのです。それも毎年同じように送られていた…ただ違う事と言えば押し花にされている花の種類が違うこと。私は本なんて読まないのに。去年はこれが原因で喧嘩にもなったのに…。娘のことをちゃんと見てれば欲しいものくらい分かるはずなのに。
「…お父さん。これは…どういう…こと?」
「…ん?何が?」
「何がじゃないよ!信じらんない!なんでまたこれなの?いい加減にしてよ!去年も一昨年もこれじゃん!」
「ま、まーちゃん…」
「私の言ってることなにも分かってなかったんじゃん!
紗菜は毎年違うのくれるよ?弘樹だって誕生日覚えててくれて私の好きなものくれたよ!なのにお父さんは、どうしてこればっかり!私は本なんか読まないじゃん!」
「ま、まーちゃんこ、これはね…?」
「本当に意味わかんない!お母さんが居なくなってからお父さんは私のことを何もわかってないよ!」
「そ、そんな事…」
「もう…いい加減にしてよ!」
「ま、まーちゃん…」
お父さんが今にも泣き出しそうなを私の肩に触れる。
「触らないで!大っ嫌い!」
「ま、まーちゃん!」
私はそのまま自分の部屋に戻り下には戻りませんでした。お父さんの料理を一口も食べず。
今思えばなんであんな事を言ってしまったのだろうと後悔しています…。まさか私はこの出来事の次の日にあんな事になるとは想像もしていませんでした。
「はぁ…昨日は少し言い過ぎたかな。」
とりあえず下に行って謝ろ。
「…お父さん?」
返事がない。
「おかしいな…いつもなら起きてる時間なのに…。」
キッチンの方かな?
「おと…う、さん?」
「…」
「お父さんっ!ねぇ!起きてよ!ねぇってば!」
どうしよう…お父さんが…私のせいだ。昨日私があんな事言ったから。ど、どうしよう…
ー誕生日endー
「いただきます。」
今日の朝ごはんは焼き魚とお豆腐のお味噌汁とご飯。焼き魚は今日は焦げてないからおいしい。
「どう?今日は上手く出来ただろ?」
お父さんがソワソワしながら聞く
「…まぁ、おいしい」
「そうか。良かった。そうだ!今日はお父さん夕方には帰れるから、自分で夕飯作らないで良いからな。多分お父さんの方が少し遅いけど。」
「…分かった。ごちそうさま。行ってきます。」
はぁ。今日は早いのか…寄り道出来ないじゃん。
「いってらっしゃい。」
今日は早く帰りたくないな…昨日だってまともに話できなくて、余計に悲しくなったし。
「おーい、麻り…ってどうしたの?暗い顔して…。」
「紗菜…。あのね昨日さ…」
「そっか…お母さんの仏壇の写真がきになっちゃったんだ…まあ夢の件も解決してないしね、しょうがないよ…。そうだはい!これ。」
紗菜が綺麗にラッピングされた包みを出す。
「なに?これ。」
「昨日作ったんだ。今日は麻鈴の誕生日でしょ?」
「あっ、そうか。だからお父さんも…。」
「きっとお祝いの準備してようとしてるのかもよ?だから、今日はお父さんと暗い話じゃなくて明るい話でもしてあげなよ。」
紗菜が私に言い聞かせるように言った。
「でも…私はまだお父さんの事許せてないから…お願い紗菜。夕飯までには家に帰るから、今日だけは私に付き合って?遅く帰る口実がいるの。」
私は紗菜に懇願する。
「でもおじさんは麻鈴が早く帰るのを楽しみにしてるはずだよ?そのおじさんの気持ちはどうするの?」
「それは…。」
「今日だけは早く帰りな。大丈夫!話は明日ちゃんと聞いてあげるから。ね?」
「…分かった。」
「よし!じゃあ学校行こ!」
そう言うと紗菜は私の手を取り走り出した。
「あっ!お前らおせーぞ!」
弘樹が待ちくたびれた様子で言った。
「そういうアンタは早いね。」
「あったりめーだ。俺は根は真面目なんだから。」
弘樹が得意げに言う。
「それ、自分で言う?」
「あはは!」
二人のやりとりに私は自然と笑顔になった。
「あ!麻鈴、これ。お前にやるよ。」
そう言って弘樹が差し出したのは私が昔好きで飲んでいた紙パックのいちごオレだった。
「えっ?くれるの?ありがとう。」
「お前今日誕生日だろ?だからやる。」
「覚えててくれたんだ。」
ちょっと嬉しいな。しばらく会えてなかったし。これも今はそんなに飲まないけど嫌いなものじゃないし。それに比べてお父さんは…
「しかしアンタはよく覚えてたねー?てっきり忘れてるかと思ってたのに。」
「忘れてねーし。幼馴染みの誕生日くらい覚えてられるから。」
「ふふ。ありがとう。」
「ああ。そういやー今日の授業なんだっけ?」
「あー。アンタはそっちは覚えてないのね。今日は現代文と、数学、日本史2時間に体育2時間でしょ?」
「えー。数学あんのかよ。めんど。」
弘樹が頭を抱えて一気に肩を落とした。
「まぁ体育館あるんだからいいじゃん。」
私が慰めるように言った。
「まぁな。」
しばらくしてHRが始まり予鈴鳴って授業が始まった。
私は現代文の今の単元はあまり好きじゃない。早くにお母さんを亡くした女の子のことを書いた小説だから。
はぁ…今日はお父さんと一緒にいる時間が長いな。どうしようかな。
「…りん。麻鈴!」
「へっ?」
「へっ?じゃないの!もう昼休みだよ!」
紗菜が時計を指さす。
「うそ!本当に!?」
「アンタ授業中ずっとポーッとしてるんだもん。1回も当てられなかったのが奇跡だよ。」
「そ、そうだっけ?」
そ、そんなに長い時間考え事しちゃってたんだ。
「麻鈴。大丈夫かよ、体調でも悪いのか?」
弘樹が心配そうな顔になる。
「ううん!そんな事無いよ。ただ考え事してただけだよ!」
「全くだから学校ではあまり考え事しちゃダメなんだってば。」
紗菜が少し怒ったように言った。
「ごめんごめん。はぁーびっくりした。」
「それはこっちのセリフ!」
それからというもの体育の授業はサッカーだということもあり考え事をする日まもなく、ただ無我夢中でボールを追いかけ回りました。
「うう…サッカーはにがてなのにー。」
やがて帰りのHRも終わり…
「はぁー!今日も疲れたな!」
「アンタまたコンビニ寄らないよね?」
「あっ?ああ…昨日母さんに心配されてよ、今日から作り置きしてくれてあるから家に帰るよ。」
「そっかなら良かった。アンタコンビニ弁当ばかり食べてたら絶対栄養失調になってるところだからさ。」
「へいへいご心配どーも。太ってるお前に言われたかねぇけど。」
「なーに?なんか言った?」
「い、いや。別に…。」
「ふふっ。本当に2人は仲良しだよね!面白いし。」
「な、仲良くないよ!」
「全くだ!誰がこいつとなんか仲良くするかよ!じゃあなお前ら。」
「あ!逃げた!アンタ明日ただじゃおかないから!」
「紗菜。明日は土曜日だよ…。」
「そ、そうだった。」
「あはは!面白過ぎ。」
「もう。笑わないでよー。恥ずかしいじゃん笑」
「ごめんごめん。じゃあ月曜日ね!紗菜。」
「いつでも連絡して来ていいからね?」
「ありがとう。じゃあ」
「じゃあね!」
はぁー。帰って来ちゃった。
「ただいまー。」
「おかえり!今ご飯作ってるからカバン置いて着替えておいで。」
「…分かった。」
はぁ嫌だな…絶対気まづいって。
「えーっとパジャマは…。」
「まーちゃん!準備出来たよー」
「はーい…。」
「じゃーん!見てみて!今日は腕に寄りを掛けてまーちゃんの好きなものばかり作ってみましたー!」
嬉しそうに言うお父さんの視線先にはテーブルに並べられた、唐揚げとサラダ、デザートに食べるであろうショートケーキがあった。
「今日はまーちゃんの16歳の誕生日だから結構頑張ったんだ。さぁほら!座って?」
「…分かったよ。」
「今電気消すから火を吹き消して?」
「…うん。」
「さぁどうぞ!歌は照れるから省略ね?」
「ふーっ。」
少し面白いかも。
「おめでとう!はい。プレゼント。」
何かな?毎年同じものだったけど流石に今年はね…。
「え…。」
正直ショックでした。プレゼントは押し花で作った、栞だったのです。それも毎年同じように送られていた…ただ違う事と言えば押し花にされている花の種類が違うこと。私は本なんて読まないのに。去年はこれが原因で喧嘩にもなったのに…。娘のことをちゃんと見てれば欲しいものくらい分かるはずなのに。
「…お父さん。これは…どういう…こと?」
「…ん?何が?」
「何がじゃないよ!信じらんない!なんでまたこれなの?いい加減にしてよ!去年も一昨年もこれじゃん!」
「ま、まーちゃん…」
「私の言ってることなにも分かってなかったんじゃん!
紗菜は毎年違うのくれるよ?弘樹だって誕生日覚えててくれて私の好きなものくれたよ!なのにお父さんは、どうしてこればっかり!私は本なんか読まないじゃん!」
「ま、まーちゃんこ、これはね…?」
「本当に意味わかんない!お母さんが居なくなってからお父さんは私のことを何もわかってないよ!」
「そ、そんな事…」
「もう…いい加減にしてよ!」
「ま、まーちゃん…」
お父さんが今にも泣き出しそうなを私の肩に触れる。
「触らないで!大っ嫌い!」
「ま、まーちゃん!」
私はそのまま自分の部屋に戻り下には戻りませんでした。お父さんの料理を一口も食べず。
今思えばなんであんな事を言ってしまったのだろうと後悔しています…。まさか私はこの出来事の次の日にあんな事になるとは想像もしていませんでした。
「はぁ…昨日は少し言い過ぎたかな。」
とりあえず下に行って謝ろ。
「…お父さん?」
返事がない。
「おかしいな…いつもなら起きてる時間なのに…。」
キッチンの方かな?
「おと…う、さん?」
「…」
「お父さんっ!ねぇ!起きてよ!ねぇってば!」
どうしよう…お父さんが…私のせいだ。昨日私があんな事言ったから。ど、どうしよう…
ー誕生日endー