自由な私、不自由な私

「これって、どういう意図があるのかな?」
私こと遄水香澄はとある先生とやりとりをしていた。
その先生とは雪乃宮高校教師、片端康孝先生であることは言うまでもないけど。
いじめられていた私を助けてくれたのがこの人だった。だけど私は先生と私だけの秘密にしてしまった。
それからというもの、といっても昨日からだけどラインでのやり取りが多くなった。今日だってかなりやり取りしていた。
母親に学校を休まされて何回送信されてきたことか・・・だけど、本来の私なら嫌がるはずなのに嫌がらない自分が居るのが少しおかしい。
どこか先生が・・・手考えてる暇などなく
「香澄。体調はどう?少しはよくなった?」
「ある程度はよくなったかなぁ。だけど様子見でもう一日休みたいけど」
「普段しっかりしてるんだから休めるときに休んどきなさい。明日もお休みにしておくからね」
「はぁい」
私はつい休みたいと言ってしまい、バレたかなと思ったけど、バレなかったみたい。
少しほっとした。だけど本当は気づいてほしい。
私がいじめられてることに、そして私が傷ついてることに気づいて欲しい。それこそ片端先生みたいに・・・なんて欲が深いかな?とかおもっちゃったけどたまには・・・いいよね?
「そういえば、あなたの学校、いじめの噂があるけど、かかわってないわよね?」
正直ドキッとした、やっぱりばれたかなって思ってまた嘘をついた
「そんなわけないじゃん。そもそも所詮噂なんだから信じること無いでしょ?」
「そうよねぇ!ごめんなさいね変なこと聞いて」
お母さん。案外ちょろいって思っちゃった私のバカバカバカ!
ピーンポーン
家のベルがなった。こんな時間にどうしたんだろう。お母さんが出てくれた
「あら、片端先生。香澄ですか?自分の部屋でおとなしくしていますよ。なんならあがられますか?」
「いいんですか?」
「いいんですよ。どうぞどうぞ」
ちょっとお母さん!なにやってくれてんの!って思ったけど、ときすでに遅しってやつかな。先生はすでに私の目の前に居た。
「香澄さん。元気でしたか?」
「ライン見れば・・・わかるじゃないですか・・・。それと、明日も大事をとって休むことにしたので日にち変えませんか?」
「じゃぁここで聞きますよ」
正直驚いた、だってここ私の家でお母さん聞いてるかもしれない部屋で相談に乗ってくれるって言うんだから。驚くの一言じゃ表せないくらい驚いた。
「お母さんに聞こえるかもしれないんですよ?」
「そのときは話しましょう。一緒に」
先生それ逆効果ですからやめてください。と言いたかったけど口には出せずにいままであったことをすべて話した。
「まず、最初のほうはずっと陰口だったんです。陰口ぐらいだったら耐えれるだろうと思いました・・・陰口言われてても、普通に話すことはまだできていたので。だけど、進級したときこの学校って首席云々ってあるじゃないですか。それで首席だったんです私。親は喜んでくれましたし、友達も喜んでくれました。表面上は。裏向きは頭いいからって調子乗るなとか思ってたんですかね?それに、遄水ってそれなりに家柄がいいので、進級したあとは、ずっとあんな感じでした。服を脱がされることは無かったですけど・・・」
先生は話している間、ずっと黙って相槌を打っていた。そのおかげか、時間を忘れて
話をしていた。
「そうでしたか・・・辛かったですね」
そういうと、片端先生はおもむろに私の頭をそっと、優しく、撫でた。
「えっ、先生?」
「あっ、ごめん!つい、娘みたいに思えてきて」
「いえ・・・じゃぁ、明日聞こうと思ったんですけど、返事してくれますか?」
先生は少し考えている顔だった。それも真剣に。そして・・・
「いいですよ。答えは・・・はいです。これだけの傷を持った女の子を見捨てたりすること・・・しませんよ」
先生は傷ついた女の子といってくれた・・・だけど、なんだろう・・・心の中がまだ曇ってる・・・
「ありがとうございます・・・先生」
うれしそうに振舞ったつもりだけど、どうだったろう、とか考えていると。
「あ、だいぶ長居してましたね。そろそろ帰らなければ。」
「あっ、もう一つ、教えてください」
「はい、なんでしょう?」
「先生ってその、結婚してますか?」
「あぁ、そのことですか。してませんよ。残念ながら」
「ありがとうございます。引き止めてしまってすみませんでした」
「いいですよ。それでは、また明日にでも」
今日の日はこれで終わるかに見えた。


「はぁ、なんてことに聞いてくるんだ香澄さんは」
この俺、片端康孝は遄水香澄の相談に乗っていた。お見舞いだけだったはずなのに・・・
とか考えるのは無粋と思ったが・・・
「結婚してるか聞いてくるなんてなぁ」
どのみ、うそは言っていない、結婚どころか、恋愛すらまともにしていないのだ。俺の好きな教科が物理学だからなのか、みな近寄ろうとしなかったから、恋愛すら奔騰したことが無い。それでよくここまで来れたなといわれればそれまでだが・・・。まぁそんなことより。
「電車・・・この時間は終電ギリギリと思ったら、もう終電出ちゃったし・・・」
「どうするかなぁ」
すると俺のスマホがなった。
【片端康孝さんへ
駅には着きましたか?というか終電間に合いました?by香澄】
また短い文章だなというか文章なのか?この短さ。
【遄水香澄さんへ
終電間に合いませんでした(@_@;)どうすればいいでしょう!by康孝】
このラインがまずかったのだろう。返信がこうだった。
【片端康孝さんへ
なら、私の家に泊まりますか、空き部屋あるのでどうです?by香澄】
こんな内容が来るなんて・・・
「ほかにこのあたりであてもないし、おじゃまするかな」
【遄水香澄さんへ
ほかにあてもないので、おじゃましますね。by康孝】
「こんな内容が来たら家では今頃大騒ぎだよなぁ」

数分後
「先生。どうぞ、あがってください・・・」
「えぇ、お邪魔させていただきますね。空き部屋はどこですかね」
「空き部屋は、ここです。何かあったら声かけてください。隣私の部屋なので」
「分かりました。そのようにしますね」
会話があまりにもぎこちなかった。香澄が部屋に戻るとすぐ、香澄のお母さんがやってきた。
「終電に間に合わなくてわざわざ招いてもらってすみませんね。お母さん」
「気にしなくていいんですよ。香澄も先生のことを慕ってるようですし、先生とは一度お話したかったんですよ」
俺と話って、なんだろう。あの話、聞かれていたか?
「先生。保護者の間でうわさされているので、もしかしたら、学校の先生方にも伝わってるかもしれませんが、いじめがあるという噂があるんですが、本当でしょうか?」
やっぱりこの手の質問だったか。と俺は思ったが、学校の現状をありのまま話すわけにはいかなかったからか、俺はあくまで教師だ。
「そんなうわさ、うそに決まってるじゃないですか。我が校は進学校として有名なんですよ?いじめなんて行為してる暇もありませんよ」
「そうですよねぇ。ごめんなさいね、夜分遅くに」
「いえいえ、それと、ここでは少しお邪魔するだけで、すぐ帰ります」
「えぇ!?ゆっくりされたらいいのに・・・」
「始発で帰るので、始発は朝の4時くらいなんですよ」
「そうなんですか・・・まぁ始発まではゆっくりしていってください」
「そうさせてもらいます」
始発までは時間がある。部屋で自分で持ってきたパソコンでも開いて明日の授業の準備でもするか。
コンコン。
ドアを鳴らす音とともに失礼しますという綺麗な声が聞こえてきた
「先生・・・すこしいいですか?」
「どうしましたか?香澄さん」
「お母さんと話してましたよね。先生」
正直そのことかと思いながら。
「はい、話していましたよ」
「何かいじめ関連で言っていましたか?」
・・・正直に答えたほうがいいよな。
「はい、言っていましたよ。もっとも、うわさ程度のことしか知らなかったようですけどね」
「先生はなにも話していないんですよね」
結局本当のことを親には伝えられたくないということか。
「えぇ、進学校でいじめなんてしてる暇はないので、うわさはうそですとだけは言っておきましたが・・・」
正直、うそを言うのはが引けたがこれも教師の性だろう。自分の勤める学校を少しでもイメージ良く知ってもらいたいという。しかし、それだけではなかった。
「なら良かったです」
香澄さんは安堵するとホッとため息をこぼした。
「今日はもう寝て、少しでも体調をよくしてくださいね?」
「はい」
そういう会話をして、おそらく安心したのか、もう寝たようだった。俺はその後授業の準備をして午前四時まで時間を潰し、そっと家を出て行ったはずだった。
「先生!」
駅の改札を通ろうとすると、香澄が声をかけてきた。しかも、部屋着のまま
「香澄さん?!どうしたんですか?!」
「何も言わず居なくなるなんて、酷いじゃないですか・・・先生」
今にも泣きそうな顔と声だった。
「・・・!ごめん。みんな寝てるだろうと思って」
「そういう時は置手紙をするとかしてください!本当に心配したんですから・・・」
今にも泣きそうな声でそういった。
俺はこれほど心配してくれてる人に対してどういうことをしようとしたか・・・
「本当に申し訳ない。こればっかりは注意不足でしたね」
「先生最後に一つ質問させてください。自由を一緒に探してくれる理由が、傷ついているからといっていましたが、一人の女の子としてではないんですか?」
「・・・あくまで俺たちは生徒と教師です。それは弁えて下さい」
あえて冷たく突き放した。これで彼女がどうでるかは分からなかったけど
そしたら、
「だったら、こうしてあげます」
そういうと、俺の耳に顔を近づけた。離れようにも香澄さんはすでに手を首に回しており、離れることは不可能に等しかった。
「香澄さん?!」
「先生、私、怒ってるんですからね?いまでも。置手紙とかしてくれるんだったら心配することもしなかったでしょうけど・・・一言もくれず帰ってしまった先生は、悪い先生ですよ?お仕置きです」
そういうと、香澄は顔を赤らめながら俺の耳を甘噛みした。
「ちょ!何してるんだ!」
「だから、お仕置きですってば・・・」
さすがにそろそろまずい。そう思ったとき
「ふぅこのくらいにしときましょう。先生もものすごく照れてますからね」
「もしかして、香澄さんって、本当はドがつくほどのS?」
「はい?何言ってるんです?ただ、先生の照れた顔を見たかっただけですよ?」
やっぱりこの子悪魔や。いろんな意味で。
「誰が悪魔ですか?」
「やっぱりエスパーだろお前!」
「エスパーじゃないですよ。本当に」
その言葉からして怪しい。
「怪しくないですよー」
「だからそれg」
「エスパーに見えるんですよね?先生」
図星をつかれて少し俺はほうけていた。そして始発電車が来た。
「先生、電車が来ましたよ?乗らないんですか?」
「あ、あぁ乗るよ。それじゃ、また今度」
「はい、先生」
そういって、俺はその場を離れた
「敵わんもんだ。相手は生徒なのに、少しうれしい自分が居る」
するとラインが届いた
【片端康孝さんへ
先生。さっきはすみませんでした。でも心配したのは本当です。それは信じてください、御願いします。そういえば、今日も学校休みます。明日からは普通に登校すると思うのでよろしく御願いします。それでもやっぱり怖いです。見かけたら、出来たらでいいので助けてくださいね?お願いします
遄水香澄より】
「見かけたら助けて欲しいのか・・・見かけてなくても、助けて欲しいと思ってくれないのか・・・まぁいいけどな」
だけど、なんかすこし気分が悪い・・・どうしたものか。
「ま、仕事してれば消えるか。こんな気持ち」
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