ぶさいくな旦那様



「あら、マリ、こんなところにいたの」



中庭のベンチに座ってぼんやりと花を眺めていると、後ろからお母様に声をかけられた。



「ど、どうしたの、お母様」



慌てて立ち上がってお母様の方を向く。



「ふふ、ちょっと話したいことがあって♪」



ちょっとだけ、嫌な予感がした。



「あのね、マリはテオくんとの結婚あんまり気が進まないみたいだから、取り消そうかなって」


「えぇ!?」



当然のように言い放ったお母様の言葉に驚く。


取り消す?


あまりにも、決定が速すぎない?


まだ私、なんにもしてないのに。


テオに返事できてないのに。



「あ、まだ決まった訳じゃないのよ、本当に嫌だったらって」



いつもは落ち着いて対応しているのに、この時だけ反応が大きくなってしまった私に、お母様も驚いている。


慌てて補足のようにそう言った。



「ま、待って!!」


「え?」



思わずそう叫んでしまって、少しだけ後悔をする。


もう少し落ち着いていられたらいいのに。



「お母様、わざわざ私のために考えてくれてありがとうございます。

でも、私、もう少し考えたいの。テオとの結婚のこと。よく考えたいの。

だから、もう少しだけ、時間をください。」



勢いに任せて頭を下げる。


一国の姫として、華麗さも落ち着きもない私の態度に、お母様はどう思うんだろう。


でもやっぱり、このままは私が嫌だ。


私は、自分で返事をしたい。テオに。



「ふふ、マリったら一生懸命ねぇ。
いいわ、待っててあげる。

昔から落ち着いて慌てることのなかった娘のこんなに可愛い姿を見られたんだから、そのくらいは許せるわ♪」



お母様は美しい笑顔でそう言った。


許されたってことで...いいのかな?



「ありがとう!」



今度は丁寧にお辞儀をして、中庭を出る。



私、改めて考えたらわかった気がする。


なんでなかなか決められなかったのか。


誰もが羨む美貌を持っているのに、なんでテオの事でこんなに悩んでたのか、必死だったのか。


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