大切なものを選ぶこと
第一章

絶望と出会い





──本当に好きで、好きだから耐えられたけど…最近よく思う。




これは愛とかじゃなくて…彼にただ怯えて、この生活に甘んじ、逃げることや幸せになることを諦めているだけなのではないかと。





──私、横手美紅(よこてみく)と平野悠太(ひらのゆうた)は確かに好きで交際しているはずだった…。




悠太がおかしくなるまでは……







「なぁ美紅、昨日パチンコでスッちまったから金貸してくんね?」





「ねぇ…悠太、そろそろ新しい仕事見つけようよ」





「いいから金貸して、な?」






「ッッ、、」





グッと顎を掴まれ上を向かされ、口を塞がれる。




いつもこうだ。大事な話をしようとするとキスや甘い言葉ではぐらかされる。




そして…酷い時は暴力を振るわれる。







──18歳の時、短大進学と同時に関西から上京してバイト先で悠太と知り合った。




2歳年上の悠太はとても優しくて、甘やかしてくれて、告白されてすぐに交際関係になった。



でも…悠太の就職と同時に同棲を始めたものの、悠太は半年経たずに就職先を辞め、今は定職に就いていない。




あんなに優しくて、好きだったはずなのに…全てが変わってしまった。





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