大切なものを選ぶこと




──男性陣が夕飯の支度に行ってしまい、やることもなかったけど、楓さんと桜さんが私の相手をしてくれた。




大雅くんと凌雅くんは椿さんがみているらしい。




蘭ちゃんは桜さんの腕の中でぐっすりだ。






もともと料理なんかやったことのなかった聖弥さんが初めて台所に立った時の話や、遥輝さんと弘翔はとても料理が上手だという話。いろいろな話で盛り上がった。





楓さんは凛とした立ち居振る舞いの人だけれども話し上手でとっても面白いし、桜さんはイマドキって感じでフランクに話せた。




今日は友達の家に泊まりに行っている妹さんもいるらしい。






初対面なのに、二人の話が面白くてあっという間に時間が過ぎた。








「──失礼致します。お嬢様方、夕飯の支度が整いましたよ」





襖を開けて入ってきたのは、昌さんの側近である土方さん。





やっぱりスーツと眼鏡が似合うイケオジだ。






「あれ、お父さんは??」





「昌之なら『久しぶりに息子たちと俺も作るかな』とか何とか言って、今日は当番じゃないのに張り切って台所に」





桜さんの問いに穏やかに笑って答える土方さん。





聞けば、土方さんは昌さんと同い年で、桜さんや楓さんとも長い付き合いらしい。





『誠さんはもう一人のお父さんみたいなものなの』そう言って桜さんは笑った。







「誠さん、聖ちゃん迷惑かけてなかった?」





「…皿を一枚」






土方さんの返答に『やっぱり…』と項垂れた楓さん。




それを見て私と蘭さんは思わず笑ってしまった。






「だけど、流石に魚の捌きは見事だったよ」





「それはよかったわ。釣りは聖ちゃんの数少ない趣味だからね」





「ではそろそろ広間の方へ。桜ちゃん、蘭ちゃんはここで俺がみてるからゆっくりしておいで」





土方さんの言葉に小さく頷いて私たちは立ち上がった。






『大雅と凌雅がいるからゆっくりはできないなぁ』とボヤく桜さんと、やはり歩く姿も大和撫子の楓さんと共に部屋を出る。









───ダンディーな組長に超絶美人奥方、イケメン優男美容師に年齢詐称系三児の子持ち美人、長身男前三十代組長に大和撫子着物美女……それに加えて、噂のブラコンさんと妹さん。





なにこれ、秋庭家、濃すぎ…




< 119 / 231 >

この作品をシェア

pagetop