大切なものを選ぶこと
上座を見ると…昌さんは口元を押さえて笑いを堪えている。
いや…全く堪えられてないけど…。
椿さんと桜さんに至っては隠す気もないらしく大爆笑している。
『やるなぁ』と遥輝さんは呟いているし…、他の組員さんたちは野太い声で大爆笑中だ。
みんながなんでこんなに盛り上がっているのかわからず弘翔を見れば、「あれだ」と笑いながら上座を指さした。
昌さんの横を見れば…眉間に皺を寄せて弘翔のことを睨んでいる聖弥さん。
だけど、顔が心なしか赤いので全く怖くない。
あぁ、どっかの組長って聖弥さんの事だったんだ。
ちなみに、同時に巻き込まれたはずの楓さんは全く恥ずかしくないらしく、むしろみんなと一緒に笑っている。なんか聖弥さんが可哀想…。
「あーまぁ、あれだ。美紅ちゃんも楓も独占欲の強い、ついでに腕っぷしも強い極道の男に心底惚れられちまったのが運の尽きだと思って諦めなさい」
収拾つかないカオスな状況をどうにかしようと発された昌さんの言葉でまた全体が湧いた。全員大爆笑だ。
「親父~いい加減始めましょうよ!!」
「おやっさん早く!!」
「俺が音頭とっちゃいますよ!」
至る所から上がる野太い声。
やっぱりみんなノリがいいし、仲が良いみたいだ。
「おー、じゃあみんなグラス持てー!俺の可愛い可愛い息子であり、我らが若頭の恋愛成就にかんぱーい!」
「「「「かんぱい!!!」」」」
「なんでだよっ!」
弘翔の突込みは見事に無視されてしまい、がやがやと宴会が始まってしまった。
とりあえず…お酒の消費量がすごい。
私の座っている席はそんなでもないけど、他の机のお酒はまるで水のように飲まれている。
弘翔はお酒強いけど今日はほどほどにするらしい。桜さんは子供がいるからなんでないけど、本当はとても強いらしい。
楓さんは最初の乾杯ビールの後すぐに日本酒に切り替えていたので色々と察した。
遥輝さんは車の運転があるからとはじめからお茶だ。
机の上にある数々の料理もとても美味しそうだ。豪華な船盛に唐揚げやポテトのオードブル、サラダも3種類もあるし、天ぷらやローストビーフまである。女子も子供も好きなメニューばかりだ。
これを男勢で用意してくれたんだなって思うとちょっと面白かったり嬉しかったり。