大切なものを選ぶこと
─高巳side─
迂闊だった…。
まさか弘翔の家にいるとは。
なるべく顔合わせないようにしてるのに。参るよ、ホント。
「相変わらずでしたね、高巳君」
「蓮さん…あなたがそれを言いますか」
「女性には優しくするものだと何度も言ったはずなんですがね」
「…………」
「高巳君。私に義理立てする必要はもうない、とも何度も言ったはずですよ」
「……そういうわけじゃ、ないんです」
「君の悪いところは優しすぎるところでしょうかね」
「俺のことをそんな風に言うのは蓮さんくらいですよ」
「そうでしょうか?私からすれば、葵さんにあのような態度をとっている時点で十分君は優しい人間だと思いますよ」
「………」
「そして、葵さんにあのような態度をとっている時点で、君の気持は明白ですが」
「それ以上、言わないでください」
「承知しました」
「……………」
「……………」
「蓮さん」
「はい」
「俺はあの時から、あなたの為に死ぬと決めてるんです。蓮さんが何と言おうが、俺はあなたの為に死にます」
ずっと、そう誓ってこの世界で生きて来た。
そのためには、俺のこのくだらない感情なんて切り取って捨てるしかないんだ。