大切なものを選ぶこと




「ナニコレ…」



口に出したつもりはなかったけど、言葉が漏れてしまった。



だっておかしいでしょ…





「車の展示場…??」




「ッッ、」





私の呟きがツボに入ったらしい弘翔は小さく笑いだした。




いやいやいや、普通におかしい。よく考えれば弘翔の車だってそうだったのだ。





スポーツカー(外車)、SUV(外車)、オープンカー(外車)、セダン(外車)、クーペ(外車)、外車外車外車…なんですかコレは。




宿の『従業員用』と書かれたスペースに置かれている軽自動車が可哀想になってしまうくらいの高級車の数々。




誰でも一度は名前を聞いたことがあろうメーカーの車ばかりだ。




組の車は全て国内メーカーの黒いやつだから気にしたことがなかったけど、みんなプライベートの車はこんなのに乗ってるのか…。




よく見れば、以前に一度乗せてもらったことのある聖弥さんの車もある。






「車とかバイクとか好きな奴が多いからな」





「弘翔も車好きなの?」





「いや、俺は別に。好きな女を乗せるのに恥ずかしくない車ならなんだっていいかなぁ」





「…サラッとそういうこと言わないで!」





「すまんすまん。ほれ、行くぞ」





泊まる用の荷物はそのまま車内に、海で使う物だけを持つ。




当たり前のことのように荷物を全て持ってくれるけど、弘翔の荷物はほとんどないような…。それこそ本当に財布と携帯と着替えしか持ってないような…




男の人ってみんなこうなのかな。








──「み~く~ちゃん!」





「楓さん!!」




浜辺に足を踏み入れれば勢いよく抱き着いてきた楓さん。なんとか踏ん張って受け止める。



会合の日以来なので、一か月くらいしか経ってないけど久しぶりって感じがする。




スタイル抜群で、本当に33歳ですか!?って感じの楓さんはシックなビキニだけど、上に男物の大きなパーカーを羽織っていて色々と察してしまった。



しかも、パーカーのチャックが全開なので、聖弥さんが隠してほしいと思っているであろう部分が全く隠れてないし…






「こっちこっち!一般のお客さんも結構いるから迷子にならないでねー」





「今年は人が多いな」





「9月1日2日が土日だから、いつもより小中高生が多いのよね」





「なるほど」





「毎年言ってるけど!悪目立ちするんじゃないわよ!」





「誤解を生むようなこと言うなよ!」





楓さんの言いたいことはわかる。



逆ナンとか逆ナンとか、逆ナンとかね。




仕事中以外はみんな気の良いおっちゃん、お兄ちゃんたちなわけで、それで顔が良いときたらそりゃ目立つ。





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