大切なものを選ぶこと
「さっきから何なんだよあんた!!」
私と秋庭さんの会話に苛立ったらしい悠太が声を上げた。
「ただの隣人だと言ってるだろう」
「お前、美紅の浮気相手だろ!」
怒声と共に悠太が秋庭さんに向かって拳を上げた。
危ないッ!!
と思ったけど…
「ッッ、」
有無を言わさない秋庭さんのオーラが悠太を制した。
「喧嘩は買う主義なんだよ。
いいぞ、やるか?」
‘ただ…’と低く呟いて緩く妖艶に口角を上げた。
「男が拳を握る時はガチでやり合うときだけだって相場は決まってる。
この俺とガチでやり合おうってんだ…。骨の二三本は覚悟しろよ?」
悠太も…そして、私も息を呑んだ。
秋庭さんが悠太に向ける視線は至極冷たくて怖かった。
「やらないのか?」
「………ッ、」
絶対的なオーラの前に怯んだ悠太。
そんな悠太を一瞥した秋庭さんはいつもの優しい目で私を見た。
「今日はうちに泊まりな」
「えっ??」
驚いた声を上げた私に少し笑ってから、
「傷の手当てもしないとだからな」
と、優しく言った。