大切なものを選ぶこと
──それから、意識が朦朧とするまで殴られ続けた。
「最後にもう一度だけ聞くけど、本当に俺と別れたいのかよ?」
目が笑っていなくて、ポツリと落とされた言葉に察した。
この人からは…逃げられない。
いや、逃げたら殺される。
「いや…別れないよ…」
「だよね、俺たち愛し合ってるもんな」
「うん…」
「愛してるよ、美紅」
不気味なほど穏やかに笑った悠太はゆっくりと私を抱きしめた。
──あなたに出会うまで、この男からは逃げられないと思ってた。
でも、あなたに出会って本当の優しさを知ることができた。
この男がいなかったらあなたに出会えなかったのかもしれない。
そう思うと、運命の悪戯に、偶然という名の必然に、感謝しなくてはいけないのかもしれないね。