大切なものを選ぶこと
「おい!テメーはなに勝手なこと言ってやがる!!」
掴みかかろうとした悠太。
秋庭さんは意にも介さない様子で悠太の胸倉を掴んだ…
そして…
「好きな女の顔に傷があって何も思わない奴は俺の前で口を開くな。
…不愉快だ」
悲しそうな…絞り出すような声で言った。
「別に取って食おうってわけじゃない。
本当に大事なら明日の朝にでも迎えに来い」
「ッッ」
凛とした有無を言わせない視線と声。
悠太が黙ったのを見た秋庭さんは…
「ッ、ちょっと!おろしてください!!」
何故か私をお姫様抱っこしてスタスタと歩き始めてしまった。
「秋庭さん!おろしてくださいよ!」
「ん?もうすぐだから」
「いや…そうじゃなくて!」
「おいおい暴れるなー落ちるぞー」
さっきのタクシーの時も思ったけど…秋庭さんは人の話を聞かないらしい…
抵抗虚しく大人しく横抱きにされ秋庭さんの部屋に向かった。
部屋の前に着き、やっと降ろしてくれた秋庭さんは鍵を取り出してドアを開けた。
「入って。
ま、何もない部屋だけどな」