大切なものを選ぶこと


「おい!テメーはなに勝手なこと言ってやがる!!」




掴みかかろうとした悠太。




秋庭さんは意にも介さない様子で悠太の胸倉を掴んだ…




そして…





「好きな女の顔に傷があって何も思わない奴は俺の前で口を開くな。
…不愉快だ」





悲しそうな…絞り出すような声で言った。






「別に取って食おうってわけじゃない。
本当に大事なら明日の朝にでも迎えに来い」





「ッッ」





凛とした有無を言わせない視線と声。





悠太が黙ったのを見た秋庭さんは…





「ッ、ちょっと!おろしてください!!」





何故か私をお姫様抱っこしてスタスタと歩き始めてしまった。







「秋庭さん!おろしてくださいよ!」





「ん?もうすぐだから」





「いや…そうじゃなくて!」





「おいおい暴れるなー落ちるぞー」






さっきのタクシーの時も思ったけど…秋庭さんは人の話を聞かないらしい…




抵抗虚しく大人しく横抱きにされ秋庭さんの部屋に向かった。





部屋の前に着き、やっと降ろしてくれた秋庭さんは鍵を取り出してドアを開けた。





「入って。
ま、何もない部屋だけどな」





< 30 / 231 >

この作品をシェア

pagetop