大切なものを選ぶこと
「誰よりも、何よりも、美紅のこと大切にする…大切にしたい」
「ッ…」
「俺は、美紅のことが「ッ、待って!」」
先を紡ごうとした秋庭さんの言葉を思わず遮ってしまった。
今の…今の私にはその先の言葉を聞く資格なんかない。
それに…秋庭さんは私に同情してくれているだけだ…
この人の優しさにこれ以上は甘えちゃいけない。
「それ以上…言わないでください…」
悠太とのことを綺麗に全部終わらせて、それから…ちゃんと聞きたい。
「ちゃんと、悠太と別れます…。
そしたら、もう一回…言ってくれませんか…?」
「…………。」
懇願するように…熱くなる目頭を押さえながら秋庭さんを見る。
──じっと私の瞳を見つめた秋庭さんは小さく笑った。
「待ってるよ。
美紅が俺の言葉を、俺の言葉だけを聞いてくれるまで。ずっと待ってる。約束する。
「ッッ、」
「泣くなよ。今すぐに攫いたくなっちゃうだろ」
そんな風に優しく笑って言うから…
少しだけ悲しそうな顔をするから…
止めようと思うのに涙が止まらなくなった。