大切なものを選ぶこと
「何があっても待ってるから、何日だろうが、何年だろうが待ってるから」
「……ッ」
「一つだけ覚えておけ。
俺はいつでも美紅の味方だ。何かあったら必ず呼べ。お隣さんだしな」
苦しそうな表情を浮かべながら少しだけ笑う秋庭さん。
悠太の暴力を心配してくれていることはわかっている。
「はい…ちゃんと、解決してきます」
そう言うと、秋庭さんはやっと私を抱きしめている腕を緩めた。
「俺も、次会う時はちゃんと全部話す。俺が美紅に言いたかった言葉も今度はちゃんと届けるから」
「はい…」
優しく笑ってから私の頭をポンポンと撫でた。
──その時
ピンポーン
本音を言うと聞きたくなかった音が鳴ってしまった。
さっきまでの会話がなかったかのように腰を上げた秋庭さんはそのまま玄関までゆっくりと歩いてドアを開けた。
「美紅!!」
聞きたくなかった声が部屋に響いた。
こんなに必死な形相の悠太は久しぶりに見るなぁ…
そんな場違いなことが頭には浮かんだ。