大切なものを選ぶこと
驚きながらも荷物を置いて、悠太の正面に座った。
お酒を飲んでいたらしい悠太は血走った眼をこちらに向ける。
「で、話ってなに?」
「………別れて、ほしい」
「…………なんで?」
「ずっと考えてた…。仕事もしてくれない、堂々と浮気する、それに…もう暴力を振るわれるのには耐えられない」
「……それだけ?」
「えっ…?」
「別れたいとかほざいてる理由はそれだけかって聞いてんだよ」
悠太の口調が変わる。
まずい…これはいつもの手が出るパターンだ…
「俺以外に好きな奴ができたんだろう?」
「………うん」
「この前の奴か?」
「うん…でも、秋庭さんは何も関係ない!今までも何度も悠太とは別れようと思ってた。今のままじゃ、悠太のためにもよくないと思う…」
「俺のため?そっか、俺のためか…。
じゃあ美紅、やっぱり俺たちはずっと一緒にいるべきだろう。俺はこんなに美紅を愛してるんだから」
「もうやめよう…悠太。
この関係を続けてても何も変わらないよ…」
「隣の部屋の奴のことが好き?
だったら…もう二度と会わせなければいいな。もう美紅を誰にも見せなきゃいい。そうすれば…ずっと俺を見てくれるだろう?」
悠太の瞳が狂気に揺れた。