大切なものを選ぶこと
─弘翔side─
──抗争の激化によって俺は前線で指揮を執るよう親父に命令された。
美紅を送り出したのが一週間以上前…。
無事に別れられているはずがない。
一秒でも早く美紅のところへ行かなければ…
そんな俺の思いも虚しく、抗争は激化の一途だ。
流石に街中で銃を乱射するわけにもいかず、ここは町の外れにある古びた倉庫だ。
相手さんの頭だけ片付ければそれで終い。
わざわざ俺が駆り出されるような組でもないだろう…早く、美紅の元へ…
そう油断していたのがいけなかった。
──パンッ
乾いた銃声が倉庫内に響き、右の太腿に激痛が走った。
「ッッ、、、」
「「「「弘さん!!」」」
若い組員たちの焦った声。
あー…いてぇ…が、今はそんなことを思っている場合でも、倒れている場合でもない。
「ッッ、大、丈夫…だ。
よし、大義名分ができただろう。同盟してる組の若頭に発砲…組一つ潰すために申し分ない理由だ。遠慮はいらん…潰せ」
俺の言葉で若い組員たちが一斉に動き出した。
抗争の激化に伴い、相手取らないといけない組が増えていたが、今対峙している組はさすがに組一つ取り潰すほどの理由がないほどの小物だった。
だから、俺が撃たれたのがいい理由になった。
──「弘!!」
後方に回っていた高巳が血相を変えて戻ってきたのが視界の端に映って…意識が飛んだ。