大切なものを選ぶこと


私の言葉に、悠太は眼を見開いて私を見た。




そんなに驚くことないじゃない。



だって私に捨てられたら死ぬんでしょ…?






秋庭さんのことが好きだなんて言わないし、秋庭さんの所に行きたいだなんて言わない。






だけどもう、誰にも迷惑掛けたくないから。








──もう4月後半か。休学して1か月くらい経っている。




大学の友達だって絶対に心配している。




休学なんかしないで普通に大学に通っていれば私は2年生だから就活とか、やらなきゃいけないことがいっぱいだけど…それでも充実した生活を送れたんだ。







実家にも春休みの3月ごろに連絡を入れてから一度も連絡を取ってない。




お母さんもお父さんも絶対に心配している。






あの日から一か月も経ってしまったけど、秋庭さんは待っていてくれてるだろうか。





普通の短大生として普通の恋愛をして、普通の都会の生活を送りたかった。






どこで間違えたのだろうか…




何がいけなかったのだろうか…




どうすればよかったのだろうか…





自己嫌悪でいろんな感情が頭を埋め尽くす。






──もうどうでもいい。




死ねば何もかも全部終えられる。




私も死んで、こいつも殺す。






「ね、一緒に死のうよ…悠太」





「ッ、な、に、言ってんだよ…」





「私が全部いけなかったんだ…悠太以外の人を好きになっちゃったから。だから一緒に死のう。ね?」






何週間も軟禁されていて完全に正常な思考を失っていた。






──怖気づいたようで言葉を発さない悠太を横目にゆっくりと立ち上がった。




ふらつく足を叱咤して台所へ向かう。







あぁ…この包丁…ちゃんと研いでおけばよかったなぁ…




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