大切なものを選ぶこと
─弘翔side─
「ッ、………ッ……」
「………………」
「ッ…………」
「へーい、もうちょいーがんばれー」
夏樹のふざけた声に殴りたくなる衝動をグッと抑える。
今何をしているかだって…?
そりゃ…
「ほれ弘、あと10回ー」
リハビリだよ。
普通の病院ならリハビリは理学療法士に任せられる。
が、組専門のこの病院ではケガして運び込まれた奴は問答無用でこのドSクソ野郎のリハビリの餌食になる。
軽い言葉を掛けながら穏やかな表情でありえない量を課してくるこいつを本当に一発殴りたい。
「いいね~弘、ついでにあと2セットいっちゃう?」
「…勘弁してくれ」
「あり?やらんの?
この動き慣れっと、元の感覚取り戻すの早くなるぜ」
「クソッ…」
口車に乗せられているのはわかっているが、それでもこいつの言うことを聞いてしまう俺は…
そんなことを思いながらリハビリをこなしていく。
一分でも一秒でも早く、美紅の所へ行くために。
──夏樹と軽口を叩き合いながら今日の分のリハビリをこなしていると…
「弘ッ!!」
額に汗を浮かべた高巳が血相を変えて走ってきた。
「……落ち着いて聞けよ」
「…あぁ」