大切なものを選ぶこと
高巳の用意したスーツに身を包んで、まだ違和感の残る足に無理やり仕事をさせる。
「場所は?」
「ったく、人使い荒いよな。
ちゃんと調べてあるし、純さんに伝えてあるよ」
「よし、行くぞ」
高巳と言葉を交わして部屋を出る。
一人の男として、一人の極道として、美紅を迎えに行く。
──「…弘」
後ろから真面目な声で夏樹に声を掛けられる。
足を止めて振り返ると、久しぶりに見る夏樹の真面目な顔。
「弘の女なら、俺の患者だ。
必ず連れてこい」
「…あぁ」