大切なものを選ぶこと


高巳の用意したスーツに身を包んで、まだ違和感の残る足に無理やり仕事をさせる。





「場所は?」





「ったく、人使い荒いよな。
ちゃんと調べてあるし、純さんに伝えてあるよ」





「よし、行くぞ」





高巳と言葉を交わして部屋を出る。





一人の男として、一人の極道として、美紅を迎えに行く。














──「…弘」





後ろから真面目な声で夏樹に声を掛けられる。




足を止めて振り返ると、久しぶりに見る夏樹の真面目な顔。








「弘の女なら、俺の患者だ。
必ず連れてこい」






「…あぁ」




< 52 / 231 >

この作品をシェア

pagetop