大切なものを選ぶこと


─美紅side─






『秋庭さん……?』






『………………』






『秋庭さん!』






『もう何も言わなくていい。俺はお前をずっと待ってたよ』






『…秋庭…さん?』






『俺よりもそいつを選んだのは美紅だろう?』






『ち、違う!秋庭さん…!待って…』









──ゆっくりと秋庭さんの背中が遠ざかっていく。





呼んでも、泣いても、秋庭さんは振り返ってはくれない。





そうか…私は秋庭さんを裏切ったのか…





私のことを信じて待つよって言ってくれた秋庭さんのことを…私は裏切ったんだ。




見捨てられて当然だ。





それなのに…






『秋庭さんっ…!秋庭さん…!!』





どうしようもなく秋庭さんに恋い焦がれていて、会いたくて、見てほしくて。






──ゆっくりと遠ざかる秋庭さんに向かって伸ばした手は何も掴むことなく空を切った。






秋庭さん…





秋庭さん…




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