大切なものを選ぶこと


──行く当てもなく走って走って着いたのは、アパートから少し離れたところにある小さな公園。



時間さえ潰せればどこでもいいや…



そう思いながらベンチに座った。




「……ッッ……」




悲しくなんかないはずなのに…



ただ辛くて、静かに涙が頬を伝った。




「死にたい…」


言葉にするつもりのなかった言葉が静かに落ちた。




彼氏に浮気されて、挙句の果てに暴力を振るわれているなんてことは…親にも友達にも言えるわけなんかない。




どうしよう…いっそ実家に帰ろうか…



いや、そんなことできない。ただでさえ厳格な父を何とか説得して悠太との同棲を始めたのだから…。




考えても考えてもいい案なんか思いつかなくて、ただただ涙だけが溢れた。





──時計を見ると深夜の四時…もう少しで夜が明ける。



帰らないと…今日もバイトはある。



でもまだあの女がいたらどうしよう…




慣れたとはいえ、暴力を振るわれるのは辛い。






そんなことを考えていると…








「──隣、いいか?」






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