大切なものを選ぶこと
「次は俺ですかい?改めて自己紹介って照れやすね」
頭を掻きながら笑うスキンヘッドさん。
サングラスもしているし、顔は申し訳ないけど強面…
でも、話してる感じや雰囲気を見ると優しい人なんだろうなって思う。
「五十嵐純(いがらしじゅん)と申しやす。年は45で、血液型はA型…いやこれは必要なかったか…。秋庭組幹部筆頭、若頭付き護衛頭をしてやす。よろしくお願いしやす」
ガバッと頭を下げられてしまい、私もつられて頭を下げた。
やっぱり思っていた通り、優しそうな人だ。
「弘さん同様、命に代えてもお守りいたしやすんで、安心してくだせえ」
「は、はい…」
強面で優しく笑われて、思わず声がうわずった。
「それにしても…あんなに小さかった弘さんが…こんなに素敵な女性を…ッ、立派になられて…ッッ…」
何故か純さんはハンカチを取り出しておいおい泣き出した。
そんな純さんを苦笑いで見つめる秋庭さんと高巳。
「おーい純さーん、話進めたいんだけどー」
「おい純、いい加減泣き止めよ」
「これが感動せずにいられやすか弘さん!俺ぁ、弘さんが赤ん坊の時から見てきてるんですぜ!今晩は赤飯炊きやしょうか!?」
「落ち着けよ純…」
うん、誰がしゃべっても話が進まないね。
三人の仲がいいのが垣間見えてちょっとだけ羨ましい…。
とりあえず、純さんに対しては敬語を貫くことを一人で心に誓った。
スキンヘッドで強面…とか思っててすみませんでした純さん…。
「で、弘、おやっさんはどうすんのよ?」
「一か月後か二か月後か…落ち着いたら美紅連れてちゃんと話に行くさ」
「蓮さんは?姉さん二人よりもブラコンの蓮さん説得する方が骨が折れると思うぜ」
「姉貴たちはしょっちゅう本家に顔出すから、親父に挨拶行くときに紹介する。兄貴は…あー…まぁ…何とかなんだろ」
そういえば、秋庭さんにはお兄さん1人、お姉さん2人、妹さんが1人いるって言っていた。
それにしても…ブラコンの部分は否定しないんだな…
と思っていると…
「気を付けた方がいいよ。蓮さんだけじゃなく、弘の方もブラコンだから」
高巳が面白そうに笑って言った。