大切なものを選ぶこと
第二章

嫉妬と束縛は紙一重




「で、美紅~!どうなのよ噂のイケメン年上彼氏とは!うまくいってんの~!?」








あの出来事から一か月半、秋庭さんと付き合い始めてから一か月半が経った。





秋庭さんたちのおかげで5月の後半から大学に復学することができている。




1年生の後期に取るはずだった単位が取れてなくて、かなりハードスケジュールな大学生活だけど…








──真希(まき)、加奈(かな)、由美子(ゆみこ)の大学に入ってからずっとつるんでいる4人で昼食をとっていると、いきなり話題が彼氏の話になった。





親友である3人には悠太と別れたことも、秋庭さんと付き合い始めたことも言ってある。




さすがに秋庭さんの職業は隠してあるけど…。





私が休学している間、三人とも私のことを本当に心配してくれていた。




だから…今こうして4人で他愛もない話をしながら笑い合えるのがとても嬉しい。







「あー…秋庭さんのこと??」





「そうそう!その秋庭さん!」





ニヤニヤと笑いながら肘でつついてくる真希。




3人には悠太と別れた理由は束縛がエスカレートしたからだと言ってあるし、秋庭さんは別れるときにお世話になった人だと言ってある。






「なによー浮かない顔して!私と真希なんか絶賛彼氏募集中なんだから少しくらい幸せ分けてよー!!」






おにぎりを頬張りながら言う加奈は真希と肩を組んで『非リア同盟組むぞ!』とかなんとか言いながら盛り上がっている…





私と同じで彼氏持ちの由美子は話が自分に飛び火しないように課題のレポートやり始めちゃったし…







「で、ホントにどうしちゃったの?前は惚気てたのに…噂の秋庭さんに不満でもあるの?」





少しだけ真面目な顔の真希。





「いやっ、不満ってわけじゃないんだけど…」





「じゃあ何よー!言っちゃえ言っちゃえ!!」







いや…本当に不満ってわけではない…。




秋庭さんは私なんかにはもったいない人だし…






ただ…一つだけ…ほんとに一つだけ最近悩んでいるのが…













「……優しすぎる」








「「「は?」」」







私の言葉に3人の素っ頓狂な声が重なった。




我関せずでいた由美子もちゃっかり聞いていたらしい。






「ちょっと何言ってるのかなこの子…聞き間違い!?」





「いやだから…秋庭さん優しすぎるの!」






私の切実な悩みに三人は訝し気な視線を寄こしてくる。





確かに、そりゃ…贅沢な悩みだってのは分かってるんだけど…





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