大切なものを選ぶこと
─美紅side─
眩しい日の光と鈍い頭の痛みで目が覚めた。
辺りを見回すと、見慣れた自分の部屋で…あぁ…そうか、昨日飲みすぎちゃったんだ…
いや、ちょっと待って…。どうやってここまで帰って来たんだ…
そう思いながらベッドサイドを見ると達筆すぎる字で『すぐ戻る』と書かれた置手紙があった。
何度か見たことのある秋庭さんの字…。
じゃあ秋庭さんがここまで送ってくれたのか…。申しわけない…。
一人でうだうだと考えていると携帯が着信を告げた。
慌てて出ると、相手は真希だった。
『もしも~し美紅~?起きてる?』
『んー、今起きたよー』
『二日酔いでしょ?』
『うん…ちょっと頭痛い…』
『かなり飲んでたもんね~』
『迷惑かけてごめん!!』
そこまで言うと、真希は何かを言い淀んだ。
少しだけ間が空いてから、
『とりあえず、彼氏さんには謝った方がいいよ』
と歯切れ悪く言われた。
『あー…うん。秋庭さんが迎えに来てくれたんだよね…ホントに申し訳ないなぁ…』
『それもそうだけど、合コンに行ったことちゃんと謝った方がいい!』
『え…?』
『彼氏さん、美紅のことが大事で仕方ないって顔してたよ。あんだけ大事にしてもらってるなら疑っちゃだめだよー』
『う、うん』
捲し立てるように言う真希に思わず頷いてしまった。
昨日、いったい何があったんだろう…
記憶が曖昧でどうしても思い出せない…。
『あと、彼氏さんにお礼言っといて!ごちそうさまでしたって。あ、タクシーのことも!』
『う、うん。わかった…』
『美紅、あんなハイスペックイケメン彼氏めったにいないからね!それに…あんなに大事にされてるんだから、大丈夫』
『ありがと…真希』
『とりあえず!今度、大学であのハイスペック彼氏さんについて詳しく教えてもらうからね!』
勢いよく言った真希は笑ってから電話を切った。
ちょうど、『邪魔するぞー』と玄関から秋庭さんの声が聞こえてきた。