大切なものを選ぶこと
秋庭家の面々はガチで濃い
で、ドウシテコウナッタ…
秋庭さん…弘翔に同棲を提案されてからまだ三日しか経っていない。
それなのに…今、私は弘翔のマンションの前にいる。
というのも、まずあの日のうちに弘翔と一緒に私の部屋の荷物をまとめた。
もともと高巳が用意してくれた部屋だったし、家具は一式備え付けだったから、洋服や小物などを整理すればよくて、すぐに終わった。
そして…一昨日と昨日で私の実家、つまり関西のド田舎に弘翔と一緒に帰った。
『久しぶりに乗るな』なんて言いながら楽しそうに新幹線や電車に乗る弘翔は、『同棲するなら親御さんにもちゃんと挨拶したい』と言って、無理やり仕事の都合をつけてくれた。
代わりに高巳が死にそうな顔をしてたけど…。
私の大学の方は、みんなに同棲することとそのために実家に帰ることを言ったら、出席カードは任せろ!と盛り上がっていたから大丈夫だと思う。
悠太との同棲の時だってなかなか許してくれなかった厳格なお父さんが、付き合って2か月弱の人との同棲を許してくれるわけがない…と思っていたんだけど…
弘翔はものの数十分でお父さんを懐柔してしまった。
もちろん、職業が極道であることは言わなかったけど…。
あ、お母さんは会って早々に弘翔のイケメンスマイルにやられてた。
大学教授をしているお父さんと楽しそうに話ができるくらい頭がいいし、話が上手くて聞き上手だ。
聞けば、京都にある旧帝大出身らしく、まさかの出身大学がお父さんと一緒だった。
てか…その大学って…あの…あれだよね、あの日本で2番目くらいに偏差値高いあそこですよね。ハイ。
そんなことは初耳だった私はその場で変な声をあげてしまった。
その日の晩、弘翔は『長居は申し訳ないから俺はもう帰るけど、美紅は泊ってけ。親子水入らずって大事だぞ』と言って、両親に深々と頭を下げて帰っていった。
結局、私は実家に一泊してから帰ったけど、お父さんにもお母さんにも『秋庭君に迷惑だけは掛けるな』と耳にタコができるくらい言われた。
厳格で生真面目なお父さんが男の人をべた褒めするのは初めてかもしれない…
──そして一泊明けて、東京に戻ってきて、今に至る訳だ。
私が実家に戻っている間に高巳と純さんが荷物を全部運び込んでくれていた。
で、今、弘翔に連れられてマンションの前にいるわけだけど…
「でかすぎない…?」
「そうか?」
「うん…でかい…」
五階建ての低層階マンションだけど、横と奥行きが広すぎる…。
聞けば一つのフロアに一部屋しかないらしく、しかも弘翔の部屋は最上階らしい…。