紳士系同期と恋はじめます
彼の怒りを含んだ声を始めて聞いた。
「ぼ、僕は、今から、彼女とコーヒーを飲みに行く約束を……」
「糸川さん。本当?」
振り返った彼に、私は大きく首を横に振って見せた。
「約束はしていないそうですが?」
「う、嘘だ!」
断じて言う。
約束なんて、していない。そもそも、このおじさんが誰なのか知らない!
「彼女、震えていますよ。彼女のことを怖がらせて、楽しいですか?」
口調は丁寧で、怒鳴る訳でもないのに、彼の声がよく通るせいか、おじさんの顔に恐怖に怯えている。タイミングよく、電車が到着したのか、チラチラと私達を見つめる視線が痛い。
「何なら、出るとこでましょうよ。確か、この先に交番がありましたよね」
元原さんが、警察をちらつかせると、おじさんは舌打ち一つ鳴らして、逃げるように去っていった。