料理男子の恋レシピ
カレーライス
次の日。
「西原さん。」
別の部署の女の人にいきなり声をかけられる。きれいな女性だけど、なんとなくツンとした感じ。
「省吾さんとどういう関係なの?」
いきなり、なに?
「どういう関係でもないです。」
というか、誰?
「でも、一緒に帰ったんでしょう?」
なんで、知ってるんだろう。昨日いた誰かから聞いたんだろうけど……
「それは、たまたま、家が隣だから送ってくれたんです。昨日はじめて知りましたけど。」
「あらそう。まぁ、省吾さんが相手にするわけないわよね。」
その言葉にちょっとムッとする。
なんなの、この人。
「かなちゃーん。ちょっとこれ手伝ってくれるかな?」
由香さんに呼ばれる。
「すみません。呼ばれたので。」
会話を終わらせ、由香さんのところへ向かう。
由香さんは私に書類を渡す(ふり)をしながら、小声で話しかけられた。
「大丈夫?絡まれてたみたいだけど。」
ほんとに用事があった訳ではなく、助けてくれたみたい。
「なんなんですか、あの人。すごく感じわるかったです。」
「経理の高木さん。いい男捕まえて寿退社するんだって言ってるらしいわよ。それで、省吾さん狙いみたい。」
会社に何しに来てるんだろ。
「彼狙いの子は他にもいるみたいだし、かなちゃん気を付けなよ。家が隣なのも言わない方がいいと思う。」
「わかりました。」
さっき、言っちゃったけど……まぁ、仕方ない。
「そんなに人気あるって、高崎さんなにものなんですか?」
かっこいいとは思うけど、それだけなら昨日の他のメンバーだって、相当かっこよかった。
私の言葉に由香さんが驚く。
「かなちゃん省吾さん知らないの?!」
と、言われても。知らないものは知らない。
「営業部での成績は断トツ。顔も人当たりもいいとなれば、言い寄る女は数知れず。でも、誰にもなびかないから難攻不落って言われてるわ。営業部には、高崎部長がいるから、みんな下の名前で呼んでるの。」
ふーん。そうなんだ。
「それで、高崎さんじゃなくて、省吾さんってみんな呼んでるんですね。」
一人、納得していると由香さんも納得したようにうなずいている。
「かなちゃん、ほんとに省吾さん知らなかったんだ。」
「はい。」
「なるほどね。省吾さん、自分に気がある女の子とは絶対2人きりにならないらしいのよ。だから、昨日かなちゃん送っていったのちょっと話題になっちゃって。」
あぁ、さっきの女性が言ってたのもそういうことか。
「だから、気を付けて。女の嫉妬は怖いわよ。」
2度めの忠告。
「気を付けます。」
もしかすると、高崎さんはこうなることを予想してあの条件'社内では内緒'を出したのかもしれないな……