料理男子の恋レシピ
2人向かい合って、カレーを食べる。
「美味しいです。」
「ん。美味いな。」
「なにか、隠し味とか入れてるんですか?」
私の言葉に、省吾さんが怪訝そうな顔をした後、溜め息をつく。
「お前、隠し味いろいろ入れて失敗するタイプだろ。」
なぜそれを?!
そう。味さえなんとかなればいいと思ってたから、いろいろ入れて、失敗をごまかそうとしていたけど、結局、味がぐちゃぐちゃになってよく分からない味になっていた。
「隠し味は基本的な料理ができる人が+αですることだから。ちゃんとできるようになるまで、隠し味禁止な。」
「…………はい。」
素直に従うしかない。
それにしても。
「省吾さんってなんでそんなに、料理できるんですか?」
ずっと疑問だったことを尋ねる。
「うちさ、 親が教師なんだけど。忙しい時期になると、帰りが遅いんだわ。で、待ちきれなくて料理してるうちにな。」
省吾さんが少し懐かしそうに話す。
「俺も最初は失敗ばっかりでさ。小学生くらいの時かな?カレーで鍋焦がして使えなくしたことあるし。いっぱい入れたら美味しいかと思って、いろいろ調味料入れたら和なのか洋なのかよく分からない変な味になったりとか。見かねた母親が休日に料理教えてくれるようになったんだ。」
なんだ。省吾さんも最初からできたわけじゃないんだ。
どうりで、私の考えを読まれるわけだ。同じ失敗してたんだから。
「手順に意味があるっていうのも、教えてもらったときにやっと理解して。それ以来、いろいろ考えて作るようになってから上手くなったな。」
「私も上手くなれるかな…」
「なれるよ。」
省吾さんが優しく言ってくれる。その言葉に少しだけ勇気が出た。
夕食後、食器を洗って帰る支度をする。
「今日はありがとうございました。」
「こちらこそ。洗濯とかアイロンがけありがとう。次、水曜日くらいに、お願いしたいんだけど。大丈夫?」
水曜日…は、なにもなかったはず。
「わかりました。」
「洗濯は自分でするから、アイロンだけ頼むわ。」
「はい。じゃぁ、また。」
「じゃぁな。」
こうして、1日目が終了した。