料理男子の恋レシピ

あれから、2週間。
省吾さんは、本当に忙しそうにしている。休日出勤するからと、土日にあったお料理教室もお休みだった。

'ギブアンドテイク'
そう言ったのは省吾さんだけど、省吾さんと私のギブアンドテイクは崩壊してる気がする。
先日、省吾さんの家に行くとメモとお菓子が置いてあった。
'洗濯ありがとう。料理教えられなくてごめん。よかったらどうぞ'
有名なパティスリーのマドレーヌ。
美味しそう。
省吾さんのお詫びの気持ちなんだろうな、と思い遠慮なく受けとる。
'ありがとうございます。私のことは気にせず、お仕事頑張ってください。また、落ち着いたらお料理教えてくださいね。'
そう、メモを残しておいた。
落ち着いたら。
それはいったいいつになるんだろう。
省吾さんは私に仕事の話はしないから、忙しい理由も期間もわからない。
相手のことを全然知らない。その程度の関係。

会社での噂は少しずつ沈静化してきたけれど……
省吾さん狙いの一部の社員から呼び出され、真偽を問いただされたり、『省吾さんに近づくな』『省吾さんの迷惑だ』といったことで責められたりすることがある。

家まで送ってもらっただけで、ここまで言われるなんて。意味がわからない。まぁ尾ひれがついて広まったせいなのだろうけれど。

'女の嫉妬は怖い'
由香さんの言葉を思い出す。

料理を教えてもらってるなんて、口が裂けても言えないな………


『なんかあったらちゃんと言えよ』
省吾さんはそう言ってくれたけれど。
忙しそうな省吾さんに迷惑はかけれないし、省吾さんが私を庇うとまた変な噂になりかねない。

どうしたらいいんだろう………

< 21 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop