料理男子の恋レシピ
咄嗟に振り返ると、白石くんが左手で高木さんの手首を掴み、右腕で私を抱き寄せていた。
「加奈子。大丈夫か?」
「う、うん。。。」
なんで名前呼び?
「経理の高木さんでしたよね?加奈子と付き合ってるのは俺ですから。他の男の話しないでもらえますか。」
へっ?!
「これ以上変な噂たてられたら困るっていうから、黙ってましたけど。加奈子が危ない目に会うなら話は別です。次、彼女に危害を加えるようなことがあれば容赦しませんから。」
にこやかに話してるけど、目は笑ってない。
なにこれ。どういうこと?!
「加奈子。行くよ。」
呆然とする高木さんをおいて、白石くんは私の手をひいて歩き始めた。
エレベーターホールまでもどる頃、やっと頭が動き始めた。
さっきのは、私を守るための咄嗟のうそ。そのことにようやく気づく。
「白石くん。助けてくれてありがとう。」
「いえいえ。それより、かなちゃん大丈夫だった?時間になっても来ないから、部署見に行ったら帰ったって言われるし。探してたんだ。」
「そうだったんだ。大丈夫だったよ。あんな、うそつかせてごめんね。」
そういうと、白石くんはいたずらっぽく笑う
「俺としては、ほんとにしてもいいんだけど。」
え?!えぇっっっ?!!!
「なんてな。」
なんだ。冗談か。
安心したような、残念なような不思議な気持ち。
「そろそろ行くぞ!!!遅れる。」
「ほんとだ。」
気づけば時計は18時半近くを指している。
2人で急いで同期会の居酒屋へむかった。