小さな私とおおばあちゃん。
小学校からの帰り道。


そのとき住んでいたマンションは、
一本道のだんだら坂を下って左に曲がったところ。




それは、

梅雨入りしたての頃だった。



私は青い大きな傘を差していて、
水溜まりを避けながら坂道を下っていた。






ふと顔を上げると、


マンションの角から女性が現れた。



ネット?のようなものがついた黒い帽子。

髪は肩に掛かるか掛からないか位の、
ブロンドに近いブラウンのソバージュヘアー。

黒のジャケットに、丈の長い黒のワンピース。
黒のストッキングに、黒の靴。


全身真っ黒なのだけれど、



キレーな人だなぁ…



そう思った。


でも、傘を差していない。








私はサッと、傘を前に傾けた。




なぜだろう。




“ 見てはいけない ” 気がした。






ドクン

ドクン

ドクン...



心臓が高鳴る。。




坂の中腹辺りだろうか。



彼女とすれ違う瞬間、

私は彼女の方を向いた。


どんな顔か、見てみたかったから。











「・・・・・?!」




そこには、



  何  も  な  か  っ  た 



ソバージュヘアーの間には、

何もない “ 空 間 ” があった。





私は前を向くと、早足で通りすぎた。




そしてすぐ、振り返った。





「・・・・・え?」










一本道の坂道。


曲がり角も家もない、のに。





そこには誰も




いなかった。











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